価値が「機能」→「ストーリー」の時代に求められるマーケテイングの考え方
人がプロダクト(商品)やサービスを買うときに、何を考えて買うのでしょうか。
逆に言うと、サービスなんかを開発する側であれば、意図的にその部分を震わせることが重要になるわけです。
2019年の今この瞬間、日本に住む人々が何を好んでいるのか?という価値観よりはむしろ、その価値の変遷にこそ重要なポイントが詰まっています。
ここ20〜30年くらいでしょうか。高度成長期→バブル崩壊という時代をへて、日本の消費市場の価値観は大きく変わりました。
一昔前に求められていたものは圧倒的に「機能」だったわけです。
例えば、テレビが観れる。ラジオが聴ける、音楽が身近になる。移動ができる。などなど。
家電なんかでいうと、便利な機能がたくさん付いているものの方が値段も高いし、売れたわけです。それが高度経済成長期。
そういった「機能」を求める市場こそが、日本を世界一の技術大国に押し上げたわけです。
機能というのは、技術のことです。より良いものをつくる。より技術力がある企業が強い。そうやって日本は技術競争を繰り広げ、今のモノづくり大国が築き上げられました。
ところが、あるところから、どの会社やブランドの製品、サービスを選んでも、ほとんど機能が変わらない、という時代へと突入しました。
それまでは、「この商品ならA社」とか「あのサービスならB社」となっていたのですが、そういう「機能で差別化を図る」というのはよほどの技術力じゃないと、なかなか違いを生み出すことができなくなったのです。
そこで次に市場が求めたのが「デザイン」です。見た目のデザインもしかり、使いやすさとか、生活に馴染むとか、そういうもので商品やサービスを選ぶようになっていきました。
デザイン消費の時代です。
企業において「機能+デザイン」を兼ね備えた製品は、最強でした。
日常的に使うペンやノートもそう。パソコンもそう。家電もそうです。
それらに求められたのは、使いやすさ、便利さという「機能性」に加え、見た目がファッショナブルで、イケている商品。自分のライフスタイルに合っているもの。
デザインがダサいと、どれほどいい機能を持っていたとしても、手にとってもらうことができないという消費市場が出来上がったわけです。
「ストーリー価値」の時代へ
そして近年、3つ目のポイントとして「ストーリー(=物語)」が重要視される時代になってきました。
僕らの生活にはすべて、そこに「意味性」が求められるようになったのです。
僕らは日々、iPhoneをつかってSNSをし、スタバのコーヒーを飲んで、インスタグラムに写真を投稿する。
ヘッドホンはBeats(ビーツ)で洋楽を聴くし、欧米のミュージックビデオを見るわけです。
技術力だけじゃないし、デザインも様々なものが溢れている今の時代、そこにどんなストーリーがあるのかというプラスアルファを消費者は求めているのです。
そのストーリーというのは実は、偶然できたものではなく、設計することができるというのが僕の意見です。
技術にも、デザインにも設計するためのノウハウがあるのと同様に、ストーリーにもあるわけです。
ただし、人間というとても偏見的な生き物に対して「機能」「デザイン」そして「ストーリー」の3つを認知させるというのは、割と難しい。
合理的に判断しない人間だからこそ、それを伝えるための仕組みが重要になってくるのです。
自分のストーリー、外のストーリー
前提として、人は何らかのストーリーを求めます。
それは今の時代だからではなく、太古の人類から備わっている普遍的な欲求です。これはもう原理として受け入れるべき。
人は人それぞれにストーリーを求めるけれど、そこには2つ「自分のストーリー」と「外部のストーリー」があると思ってます。
何らかの商品やサービスを買ってもらおうとする場合、「消費者自身のストーリー」と、そしてその「商品自体が持つストーリー」が重なる部分をつくってあげる(ベン図みたいな)ことだと思ってます。
その2つの円が重なる部分を人は「共感」と呼びます。「共感」ってめっちゃ大事やん、って言う話です。
商品、サービス、ブランドを設計するときは、どのターゲットをどの部分で共感させるかということも設計に入るわけですね。ブランド戦略とはこういう風に組み立てられます。
よくあるプロモーションが「あなたは、このサービス(や商品)を使うべき」という前提で作られたストーリー。
このパターンのほとんどが失敗するのはそこに共感性がないからです。
逆にいうと、その「共感」というものを、2つの円を重ねることによって意図的に作り出すことができます。
これがマーケティングと呼ばれるものだし、本来のプロモーションのあり方なのです。
ここまでの話は、わりとマーケティングの基本になっている領域なので、ビジネスをやる人は、知っていて損はない内容のはず!
自分ならではのストーリーで満足できる人、共感を求める人
ここからはちょっと人による話なのですが、人間には2種類の人種がいて、1つは「自分のストーリーで完結できるタイプ」。もう1つは「外に共感を求めるタイプ」です。
自分だけで完結できる人は、強いです。他者の認知を必要としないわけなので、自分独自の物語をどんどんと書き進めていくことができます。僕の友人にもこういうタイプがいます。
対して、他者の認知を求める人もいるわけです。こういう人は共感が欲しいし、認めて欲しいと思っているので、反対に「外部のストーリー」にとても共感する一面も持っています。
そして世の中の割合で行くと、後者(外部に共感を求める人」が多いため、何かの商品やサービスのコンセプトを設計するときは、ここを狙いに行く必要があります。
ここで重要なポイントは、設計をする人自身がどのタイプなのか?ということ。
後者のタイプが何かを設計する際は、自分の中の共感ストーリーをちゃんと言語化し、それを外と重なるようにすればいいわけです。
その人自身がいいなと思うものは、多くの人がいいなと思うわけですから。
一方で、難しいのは、前者の「ゴー・マイ・ウェイ」のタイプ(実は僕もそうです)が何かの設計を考えるとき。
自分がいいなと思うものは、共感ベースにあるわけではないので、ちゃんと世の中と消費者の心理を見極める必要があるのです。
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結論。
消費の価値は変化をしている。
その変遷の最先端にあるのはストーリーだということ。
そして、ストーリーも共感も、意図的に設計することができるということです。
人間というのは、物語を求める生き物だというのは、素敵な話ですね。
僕も、素敵な物語を紡いでいきたい。