【映画『何者』感想】就活とツイッターのリアルを描く

2019年10月27日就活生向け, 趣味

朝井リョウ氏の著書で、映画化もされて有名になった物語『何者』。

 


何者(朝井リョウ著)  

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。
何者 (新潮文庫)

 

 

 

現代の就職活動のリアルとか、ツイッター、SNSの裏側とか、人間心理の奥深さと社会の構図を描いた素晴らしい作品であり、同時に問題作でもある。

2016年に映画が公開されて、佐藤健さん主演、有村架純さん、二階堂ふみさん、菅田将暉さん、岡田将生さん、そして山田孝之さんら豪華キャストが目立つ作品。

僕はちょうど自分自身が就活生だった2016年に映画館で見た記憶が新しい。
(もちろん小説も読んだ。映像がある分だけ、よりリアル)

先日、この映画を2年ぶりにAmazonプライム・ビデオで見たので、その感想を書いてみようと思う。

 


何者 

朝井リョウが直木賞を受賞し、大きな話題を呼んだ原作『何者』の映画化作品。
何者

 

 

自分自身が「何者」であるのか?

佐藤健さん演じる二宮拓人が主人公。

ひとつの部屋に集まった5人の男女。

大学の演劇サークルに全力投球していた拓人。拓人がずっと前から片想いをしている瑞月。瑞月の元カレで、拓人とルームシェアをしている光太郎。拓人たちの部屋の上に住んでいる、瑞月の友達の理香。就活はしないと宣言する、理香と同棲中の隆良。

理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まる5人。それぞれが抱く思いが複雑に交錯し、徐々に人間関係が変化していく。

「私、内定もらった…。」

やがて「裏切り者」が現れたとき、これまで抑えられていた妬み、本音が露になっていく。人として誰が一番価値があるのか? そして自分はいったい「何者」なのか?

演劇に打ち込む、普通の大学生として、仲間内で就活に臨む中で変化する人間模様があって、現代風にSNS(ツイッター)がそのアクセントになっている。

現代の社会の構図と、その社会の構図にどのように向き合うのかという若者の心理のリアルを浮き彫りにした、すごく生々しい物語。

今の大学生の多くは、就職活動を通して初めて社会に触れ、そして自分自身が「何者」であるのか?を問い続けるわけです。

 

・あなた自身を、1分間で表現して下さい。手段は問いません。
・我が社を志望する理由を教えてください。
・あなたの強みはなんですか?自己PRをしてください。
・あなたにとって「はたらく」とは何ですか?

というような社会からの問いかけに対し、片や反発をし、片や受け入れ、揺れ動く若者の心理がそこにはあります。

自分って、何者だっけ?

就職活動をしたことがある人は、一度ならずこの問いに直面したことがあるでしょう。

振り返ってみると、自分自身に語れる経験なんていうものはなく、強みなんてないし、やりたいこともない。

志望動機を聞かれても、そもそも志望していないから語れるものがない。

自分が社会の歯車になってしまうのか、それはいやだと思う。

でも、周りは一斉に髪を黒に染め、スーツを着てOB訪問をし、一斉に選考に臨んでいく。

 

SNSの中の自分は、本当の自分なのか?

自分が好きでやっていることは、社会を考えたときに価値があるものなのだろうか。

これで食っていくことはできない、と周りの大人たちは言う。安定が第一だ、と・・

何者でもない自分自身と向き合うことが就活なのかもしれない

僕が思うのは、多くの人たちは就職活動というものを通して、自分自身が何者でもないということに向き合うのだと思っています。

いま、社会に出ている人たちは、少なくともその多くの人たちが、社会の中では自分自身は何者でもないのだということに気付かされた瞬間があるはずです。

その事実を受容してようやく、自分自身の意思や、人生と仕事というものを考えるようになる。

それでいいのだと思っています。

資本主義の世の中、新卒一括採用がスタンダードである日本、「資本家と労働者」という区分の中にある市場原理。

僕らはその社会に生きています。その事実をちゃんと見つめることだと思うのです。

 

何者でもないという自分自身と、でも、自分はそこにいるわけです。ここに立っているのです。その狭間で揺れるのが辛い。

答えは今までの中にあるし、今ここに立っている自分自身の中にあります。

 

本作の中で後半、拓人がツイッターの裏アカウントで、友人たちをあざ笑っていたことがバレるというシーンがあります。

でも、拓人はなにも友人たちを見下していたわけでも、バカにしていたわけでもない。

そこには23歳の若者として、社会の波に飲み込まれる不安に対する予防線を張っていただけなのだと思う。

それは誰しもが起こりうることだと、僕は思うのです。

4人の未来像

僕の勝手な予想ですが、やっぱり二宮拓人は、将来成功する人だと思う。

友人の神谷光太郎も、グローバルをいきっている小早川理香も、残念な将来になりそう。

そして拓人が片思いを寄せる田名部瑞月は、可もなく不可もなしの人生。

そういう人間模様って、やっぱり若い頃に出ているよね、って思う。

 

この映画のタイトルは『何者』以外にはありえない。

 

<追伸>

やっぱり、生き様が問われる場だと思うんですね。