営業の仕事とは、顧客の「緊急度」を適切に上げること

挑戦するセールスパーソンたちへ

以前に「挑戦するセールスパーソンたちへ」というカテゴリー特集の中で、対法人営業(BtoB営業ということ)で大事なポイントは「お金の流れを理解すること」だと書きました。

多くのビジネスパーソンが最初に「営業職」という仕事に就くわけですが、営業のポイントなんていうものを書き出したらキリがない。。
それこそ、世の中の多くの書店にも「営業」と名のつく本は溢れかえっているので、どれが正しいか分からないですよね。

いろんな見方・考え方があるので、営業について学びたいという人が一番成長ができるのは「あなたと似たタイプの人で」「成果を出している人を真似る」というのが正直、最も早く効果が出ます。

できればあなたの社内の人に、そのような模範となる人がいれば良いのですが・・
今の時代、社内に限らずとも社外、顧客、知り合いの知り合い、書籍、ネットなど、いくらでも情報を手に入れることはできるので、色々試行錯誤してみると良いと思います。

今回の記事では、営業として成果を出したいとか、一つの商談で受注確度を高めたい・・!と思っている人は是非、ポイントを書いてみたので読んでみていただけると。

お客さんのお困りごとの「優先度」と「緊急度」

僕自身はどちらかというと、セールスパーソンとして超ハイパフォーマー(トップセールス)というわけではなかったので、少し冷静に記事を読んで欲しいのだけれど。

水準以上の成果をコンスタントに出すことに対しては、再現性のある論理は物凄く持っていると思うし、だからこうしてブログに書いている。
一方でそこから先、例えばその組織でトップセールスであり続けるには、もう一段階、別の要素が必要になってきたりもする。

例えば、セールス職が好きで、次から次へとスポーツ感覚で入り込める人(フロー状態のようなイメージ)でないと、上の集団の中でさらにトップに抜きん出るのは難しい。
自分で言うのもなんだけど、僕のように「成果が出る再現性を自分が実行する」というものに興味が薄く、「新しいやり方」「まだやっていないテーマ」とか「こう企画したらよくない?」というところに興味関心や視点がいく人は、おそらくトップセールスになるのは難しいと思う。適性が別だということ。

前回の記事で書いた、ディスカッションの会で話した「営業が一つの商談で受注率を高めるためにはどうしたらいいか?(売上=商談数×受注率×単価と考えると、SaaSのセールスで改善すべきは受注率を上げること、という文脈)」というテーマについて今回は少し深堀りしてみようと思う。

まず、顧客との商談の中で大事なポイントは、「お困りごとの優先順位」を正しく測るということ。

お客さんが商談に入って営業の話を聞く側に回る時には、いくつかの理由がある。
例えば「本当に解決したいお困りごとがある」という場合から「とりあえず、話だけでも聞いてみるか」というところまで、商談に臨む温度感は幅広いということ。

特に対法人営業の場合、お客さんは「企業の立場として」あることを忘れてはいけない。
一般の消費者という観点ではなく、相手は企業という立場で優先順位がバラバラにあるということをまず理解する。

優先順位が低い場合は、とりあえずスルーして次の商談に行って良い。優先順位を上げる商談というのは難易度は一気に上がるからだ。(別の機会で書いてみようとも思うが)
とはいえせっかくのご縁なので「優先順位が上がった状態」になったらまた話しましょう、ということはちゃんと合意形成をして終わる。

テーマにもよるけれど、ここではお客さんの中での優先順位が比較的高かったと仮定する。
優先順位が比較的高い場合であっても、その商談が前向きに進むかどうかは分からない。

営業の立場からすると「解決したいお困りごとがあるのですね!(=優先順位が比較的高い)」「それなら弊社の商品でぴったりのものがあります」と言いがちなのだけれど、ちょっと待て。

企業の中で優先順位が高い(=いつか、どうにかしないといけない)テーマやお困りごとには「緊急度」が存在する。要は時間軸だ。

そのお困りごとが今すぐにでも解決しないといけないことなのか、1年後でも良いことなのかによって、営業から提案する仕方は変わってくる。
あるいは「いやあ、やらないといけないと思っているんだよねえ」と言いつつ、それがいつからなのか、いつまでになのか、が決まっていないケースも往々にして存在する。

営業的には、「いつから始める」or「いつまでにどうなる」という時間的なゴールがないと話は絶対に前に進まない。

営業でよく「お客さんはやりたい(買いたい)と言っていたのですが、、」といって決まらないケースでは、「いつまでに」という時間軸の合意形成がなされていないまま提案をしてしまったから、結果、「また検討のタイミングで」と断られてしまうのだ。

顧客と時間の合意形成をするだけで、営業の仕事の生産性は何倍にも上がる

お客さんの中で優先順位がある一定あるけれど、緊急度が喫緊ではない場合。
例えば、半年後や1年後に取り組む場合(「来期の予算で〜」など)は、商談の最後にきちんとネクストアクションの合意形成は忘れないようにしたい。

これはサービスや商品の説明をしたり、提案をしたりした後にも有効で、基本的にはすべて「時間の合意形成」をすることが仕事だと言っても過言ではない。

営業が何かを提案すると、お客さんに必ずこう言われる。

「ありがとうございました。では、社内で検討します」と。

これで「どうぞご検討ください」と言ってしまうと、その案件はよほどのことがない限り、そこで終わると思って良い。あるいは、進んだとしても必ずお客さんに主導権を握られて、場合によっては値下げ交渉をされるかもしれない。

もうお分かりだと思うが、この「検討します」には「時間の合意形成」がなされていないから、というのが話が進まない理由である。

何を検討するのか?誰が検討するのか?いつまでに検討するのか?いつになったら答えが出るのか?答えを出すためには何が必要なのか?

別に提案結果がNoでも良いと思う。
営業的にはお客さんの答えがYesになる努力はした方が良いが、ならない時はならない。それはしょうがない。

一番ダメなのは、YesかNoか分からない状態。そのお客さんに振り回されてしまうからだ。

営業マンは社内できっとこう言われるだろう。
「あの案件は、決まるのか?決まらないのか?」と。

もちろん答えは「わからない」ということなので、どうしようもないのだ。

であれば、商談の終わりに「この提案はいつ判断いただけるのか」「判断のためには何が必要なのか」ということをちゃんと合意形成するのだ。
「いやあ、会議にかけてみないと分からない」と言われたら、「その会議はいつあるのですか?」「会議でGoとなるためには何が必要ですか?」と聞いてみよう。そうすれば、その会議が終わった翌日に営業から連絡をして結果を聞いてもなんら不自然ではない。

それでも「分からない」とか「自分で決められない」という場合。
それはそもそも、その商談自体が無駄であるケースが多い。

決めれない人(=決める権限を持っていない人、決済者ではない人)といくら話をしても、物事は全く前に進まない。
もちろん、無駄とは言わないので、許容できるとしても最初の1回までしか付き合わない。

2回目以降の打ち合わせは不要だ。必要な場合は「何を確認する打ち合わせなのか」を明確にした状態でないと時間の無駄だし、何を確認するかが決まっている場合は、わざわざ商談をする必要はほとんどない。

 

少し話は逸れるけれど、僕が提案をする側の立場の場合は、今となったら言えることだけれど、決めることができない人(=決済者ではない人)とは、そもそも商談はしないし、提案もしない。

例えばコンサル案件の場合は、基本的には企業の社長以外と話しても無駄なのだ。
例外として、社長から権限以上をされていると事前に分かっている場合に限っては、権限を持つ部長や役員に提案をするケースもあったが、あくまでも例外。

いくら説明や提案を求められたとしても、その先にあるのが「上に確認する」とか「会議で打診する」という場合は、その提案はしないというのが基本的な僕の考え方。99%無駄だからだ。

よくあるケースが「まずは担当者が話を聞いてから」という場合。
僕は担当者に対しては「こちらから提案をした場合、あなたで導入の意思決定ができますか?」と必ず聞く。

「いや、社長に相談する」という返答に対しては、「では、社長が同席する機会でまたお声がけください」と伝えるのだ。

目の前の1つの商談の機会は逃すかもしれないけれど、それによって得られた時間を、別のところへ投資しよう。
こういう考え方を入社当初から持っていたので、傲慢と思われることも多かっただろうな・・

でも、僕からすると「話が進むかどうか分からない人」に時間を割くよりも「今のクライアント」「提案を待っているお客さん」に時間を向けることこそが大事だと思うのだ。この辺りはその人の考え方であり、ポリシーによるのかもしれない。

お客さんの緊急度を高めることが営業の仕事だと思おう

話は戻って、緊急度の話。

お客さんの緊急度が分かった場合も、いくつかのパターンに分かれる。

まず、超緊急の場合。明日にでも買いたい、今月にでも決めたい、早ければ早いほどいい、というような場合。
優先度も高く、緊急度も高い場合に初めて、営業側から具体的な提案をすることができる。ただ、この場合はお客さん自身も困っている場合が多いので、全体の中では数%のケースだと思おう。

そこから先は、提案勝負になる。価値なのか、機能なのか、価格なのか、とか。そこから先は別の議論なので、今回の記事では割愛をする。

 

次、一番多いケースとしては「緊急度が曖昧」という場合。

優先順位は比較的高いため、いい提案があれば、とか、タイミングをみて、という場合。

ここではセールスパーソンとして、最大限にお客さんと仲間になれるよう頑張った方がいい場合が多い。
いきなり具体的な内容の提案はもちろん不要。緊急度が曖昧(=時期が未定)の場合は、いくら良い提案をしても「次のタイミングで、、」と言われかねない。

やるべきことは、お客さんの緊急度を高めること。

別に詐欺をするとか騙すというわけではない。重要度が高いテーマなのであれば、いつかは取り組まなければならなかったり、解決しなければならなかったりするはずなのだ。その時期を、適切に前倒しをするお手伝いをする、といえば言葉が変じゃないだろうか。

ケースバイケースなのだけれど、よくあるのが「示唆質問」とう手法。
人間は自分自身が発した言葉に説得されるという生き物なので、お客さん自身に「この課題に取り組んだら、どんなハッピーな未来が待っていますか?」「そのお困りごとを解決しなければ、どんなアンハッピーな未来が待っていますか?」と言ってもらうということ。

このブログでは小手先のテクニックの話をしたいわけではないので、その辺りはまた次の機会に譲ろう。

代表的な営業テクニックの「SPIN」という手法にまとめられているので、興味がある人は参考にしてみて欲しい。

そもそも論だけれど、この記事で書いた考え方は「お客さんの優先順位がある一定高い」という前提の上に成り立っている。

コンサル提案をする時は、そもそもの優先順位を1から形成して高めるということもやってきたし、可能であると思う。それはどんなセールスにおいても共通する要素だと思うけれど、多少なりとも「思いの外、売れてしまう」とう側面も否めないため、使い所だと思っている。

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いかがだっただろうか。今回の記事は顧客の緊急度にフォーカスをした内容を書いてみた。

次回には、具体的な提案の考え方について書ければと思っています。読んでくださって、ありがとう。