値上げを言えない理由は、断られるのが怖いから

挑戦するセールスパーソンたちへ, 経営戦略, 事業戦略

今回も少しビジネスチックな話を。

前回の記事で、値上げ競争はやめよう、という記事を書いたので、その続きを書きます。

前提としてなぜ「値上げ」が良いと考えるのかといえば、それは「無闇な新規顧客の開拓」をやめることができ、そこにかける時間と労力を、いまの顧客に注ぐことができる余裕が生まれるからだ。

結果としてサービスの質は向上し、顧客は満足をし、自社の利益も上がる。

そして「新規顧客の開拓、命!」という考え方でやっている事業は、全てその逆をいくのだ。余裕がないのでサービスの質は現状維持か停滞、1人・1社の顧客に十分時間を割くことができず、自社の利益率は当然下がる。広がるが、薄まる。

どちらがハッピーなのか、もう一度考えてみることをお勧めする。

みな、自社の提供する商品やサービス、あるいはフリーランスの方であれば自分自身の時給単価を出来るだけ高くしたいと思っているはず。

でも、実は心の奥底では「でも(本音では)やっぱり値上げはしたくないな」と思っているのだけれど、その奥底の本音に気づけている人は、そう多くはない。

「何を言っているのか?値上げができるならした方が言いに決まっているだろう」とあなたは言いたくなるだろうが、実はそれが嘘なのだ。

「値上げをしたくない」「値下げをすることで買ってもらう」という日本企業独特の感覚に飼い慣らされた人にとっては、すぐには直らない思考かもしれないと思いつつ、この文章を書いている。

値上げをしたくない理由は「断られるのが怖いから」

これに尽きる。ようは「え!そんなにするの?じゃあ、やっぱ要らないや」と顧客に言われるのが怖いのだ。

その裏側にある心理としては、いま、あなたが提供しようとした商品やサービスに対して、今の値段以上の価値がないとあなたの本心は思っているからなのだ。

例えば今の値段の2倍で提供して「これだけの価値を提供しているのに、買わないなんて勿体無い」とあなたは思えるだろうか?いや、思えない。だから値上げを言えないのだ。

「高い」とか「安い」というのはもちろん相手が決めることだけれど、提供するサービスの価値が、値段を上回っていれば「高い」とは言われない。

「物を入れて運ぶ」という目的であれば、1万円のバッグで十分のものが購入できるにも関わらず、30万円を支払ってブランドのバッグを購入したい人の行列が止まないのは、それだけ値段以上の「価値」を感じてくれているから。

あなたが売りたい商品、提供するサービスの価値が、提示する価格よりも上回っている自信があれば、値上げをする選択は容易になる。
多くの場合は逆に、提供する商品やサービスに、値段以上の価値がないことを知っている、あるいはあなた自身が価値がないと思っているため、自信がないから「低い方の値段」を提示して、自分を守ろうとしてしまうのだ。

痛い話かな?

じゃあ、例えばあなたがフリーランスで、自分自身の1時間の値段を決めてくださいと言われたときに、あなたはあなたの1時間にいくらの値段をつけるだろうか?

多くのサラリーマンは、自分で自分の市場価格に値札をつけることができない。怖いのだ。そして適正価格もわからない。

これがいわゆる「マーケット感覚の欠如」というやつで、自分が提供できる価値がどのくらいのものなのかわからないので、永遠に「言われたことをこなし、給料をもらう」という構図から脱し得ないのだ。

一番楽なのは無料で良い人のフリをすること

少し話は脱線するけれど、一番楽なのは「無料で何かをやる」ということ。
ボランティアでも良いし、誰かの相談に乗るでも良い。

「よく人の相談に乗っているんです」という人を見かけるが、それはあなたが「無料」でやっているからであって、例えばそこの500円でも値段をつけても継続できるだろうか?
ワンコイン。たった500円でも、多くの場合「じゃあ結構です」と言われるのではないだろうか?

あえてドライに書くならば、500円で断られるのであれば、あなたの1時間はコンビニのアルバイトの時給以下の価値しかないということになる。
もちろん価値はお金だけでは測れないし、無料で何かをしたり、誰かの相談に乗ることが心底好きだというならば「お好きにどうぞ」ということなのだけれど、実は「無料で良い人のフリをする」ことが一番たちが悪いという事実もあると僕は思う。

そりゃあ、楽だよね。無料なら「誰かに求められている感」も味わえるし、責任を取らなくて良いので気が楽だ。

でも、500円でもお金をもらったのであれば、そこに責任が生じてしまう。
とくに何か事業やビジネスとしてやりたいと思うのであれば、継続するためには利益をあげなければならない。

無料・無償で何かをやり続けるためには、それ以外の場所で利益や収益がないと、続かないのだ。
一番お金がかかるのは、ボランティア活動だと知ることが、大人の第一歩だと僕は思う。

値上げに耐えられるセルフイメージを持つ

話を戻して、値上げの話。

これは2つの観点があると思っている。

1つは、提供する商品やサービスの「適正な価値」をちゃんと見極めること。
そしてもう1つが「セルフイメージを高める」ということ。

 

1つ目の「適正な価値」を見極めるというのは、結構難しい。
これはトレーニングが必要なので、一朝一夕には身につかないと思う。

日々の中で「価値と値段」を自分自身がどう思うか?を考える習慣をつけることが手っ取り早い。

ビジネス観点でいえば「なぜ、この値段設定なのだろう」「自分だったら、この商品・サービスにこの値段を支払うだろうか?」と、全て自分事で考えてみる。

日常の中でスーパーで買い物をする時でも良い。
Amazonやウーバーイーツで宅配を頼む時でも良い。

自分にとって、この値段を支払う価値があるだろうか?と考えてみるのだ。

例えば中小企業に勤める社員の場合、年収を時給換算すると1,000〜1,500円の間くらいになるのだけれど、1,000円の買い物をするのに1時間働くことを考えてみるのだ。
あなたが財布から支払う1,000円には、1時間働くだけの価値が本当にあるのだろうか?と考えることで、あなたの価値感覚・マーケット感覚は磨かれていく。

そして「喜んで是非購入したい」とあなたが本音で思えるものにだけ、お金を支払う習慣を身につけると、幸せな人生を送ることができると僕は思う。

セルフイメージを高めるためには、勉強するしかない

2つ目の「値上げを言えるだけのセルフイメージを持つ」。
実はビジネス観点ではこの「セルフイメージを高める」ということがすごく重要になる。

例えば僕はいま、個人コンサルとして経営者の方の経営相談、顧問契約をしているのだけれど、月1回、2〜3時間の打ち合わせで2桁万円のフィーをいただいている。

契約期間は1年更新なので、1年間、毎月それだけのお金を頂戴することに対するプレッシャーが、最初になかったのかといえばそれは嘘になる。

でも、自分自身の今までの生き方と、勉強と、提言する内容には絶対的な自信を持っていたので、結果として今のお仕事につながっているし、そのセルフイメージに耐えられるようになるには、やっぱり勉強を積み重ねるしかないと思う。

ちなみに、絶対的な自信があることと、「本当にこれが良いのか?もっとないのか?」と批判的に考え続けることは、相矛盾しないで両立する。

僕は自分自身がいうこと、特にビジネスの場における提言には自信を持っているけれど、一方で「本当に良いのか?この視点ではどうなのか?」という悪魔の自分も存在する。自分の中に天使と悪魔の2人が同時に存在しているのだ。

悪魔が自分自身の中に消えたときは、実はこの仕事を終えるときだと思っている。
批判の目で自分を見つめることができない人に、人様に対して経営やビジネスの議論役は務まらないというのが、僕の考えだ。

いかがだろうか。少し話が広がったけれど、ビジネスに関わっている人であれば、ケースバイケースではあるが基本的には「値上げをするにはどうするか」という発想で物事を考え、事業を組み立てた方が良いと思う。

最高のサービスをする方法を考え続けられれば、顧客は満足をし、リピートをしてくれる。
提供するサービスの質こそが、あなたやあなたの会社のブランドになる。

どちらのコースを選ぶかは、自分で決めることができるのだ。