薄利多売じゃないバリュー(=価値)ってなあに?無形商材を扱う業界の行く先
経営コンサルタントという職種に準ずる、無形商材のセールスパーソンをやったことがある人の中には、
「プロジェクトに対する関わる深さ(深度)」と「単価(粗利)」が反比例である
ということを感じたことがある人もいると思います。
ここでいう無形商材とは、プロジェクト型の事業をイメージしてもらえると分かりやすい。
ITもそうだし、システム系もそう。人材業界の一部や、広告業界なんかもそうですね。
コンサルティング業界などをイメージしてもらえるとわかりやすいと思いますが、この2軸でいうと、トレード・オフ(trade-off)の関係になります。
要は、「数が多いと、関わり方は薄くなる」し、「関わりが大きくなると、数が取れなくなる」という関係のトレード・オフです。
例えば、一般的に「コンサルタント」と呼ばれている人たちのビジネスの仕方は大きく分けて2つ。
1つは「プロジェクト常駐型」で、もう1つは「定期訪問型」と呼ばれるものです。
(というか、今僕が名付けましたが、概念は存在する)
「プロジェクト常駐型」は、クライアント企業に対して提案をし、その提案に即して実行まで支援をするというもの。
その企業の社員のように内部に入り込み、一緒になって頑張るというやつ。
一方「定期訪問型」は例えば、週に1回とか、月に何回というように、定期的に企業へ訪問をし、プロジェクトミーティングを行ったり、経営会議に参加をしたりするというもの。
わかりやすくこれらをイメージした時に、市場原理的に上で書いたグラフのような関係になるわけです。
※このように「ある一方を取ると、ある一方は下がる」という関係のことを、「トレード・オフ(trade-off)の関係」と言います
これらが今までのコンサルティング業界のスタンダードでしたし、それ以外にも例えば人材派遣もそう(例えばIT業界でいう「エンジニア派遣」とか)ですし、ここ数年で市場が伸びている顧問事業というのもそうです。
ポジションを取ることで解消されるトレード・オフ
このトレード・オフの関係を解消するためには、どうすればよいのか?
上の「コンサルタント3.0」の記事にも書きましたが、例えば経営コンサルファーム(デロイトやアクセンチュア)は、マーケット内でのポジションを確立するのがすごくうまい。
彼らの戦略を明かすことになるのであれですが、一つの例で考えると、例えば公共系の案件(国からのプロジェクトということ)のPM(プロジェクト・マネジメント)のポジションがあります。
要は、ディレクターということ。指揮官ですね。
彼らはそこをうまく押さえていて、そこから必要に応じて複数の他社に出しているわけです。
他社に出すといって、最上流のポジションを押さえているのですから、彼らの基盤は揺るがない。
それどころか、プロジェクトの指揮官をするのですから、深度を持つことができる(ようは粗利が取れる)わけで、最上流を押さえているので、ある程度のプロジェクト数を担保することができます。
それが、この図。
マーケット内でポジションを確立することで、「数か質か」のトレード・オフを解消することができるようになるわけです。
グラフでいうと、真ん中が膨らんで、直線のような形になります。
未来を描く力が鍵になる
コンサル業界のような無形商材を扱う業界における一番のバリューは、下の図で描いた「スイート・スポット(sweet spot)」のポジションを確立することです。
何が必要かというと、ひとえにそれは「ビジネスをコーディネートする力」だと言っても良いです。ビジネスデザイン力と言ってもいい。
これは何もコンサル業界だけではなく、広告業界も、IT業界も同じ市場原理です。
何も特別に難しいことではなくて、例えばコンサル業界あらゆる業種業界と提携(アライアンス)を組んで手を広げようとしていますが、単にアライアンスを推奨すれば良いということではない。
そうではなくて、それらを組み合わせて「デザインをし」「新たな絵を描く」ことが求められるということです。
これらの組み合わせによって、「薄利多売」の商流から抜け出し、「利益が取れ、数もいける」という立ち位置を築き上げることができます。
特に僕らがいる業界というのは、そこの奪い合いのような形になっており、気づいている各企業は全力で優秀な人を集め、ポジションを取り、戦略〜実行までをも請け追い、必要に応じて外部からリソースを持ってくる。そういう世界なのです。
コンサル業界は、コモディティ化します。
広告業界も、そして何よりHR業界も、いまはコモディティ化へ一直線なわけです。
それでもいいですが、コモディティ化したサービスや企業は業界の地位を下げ、10年後には綺麗さっぱり市場から忘れ去られてしまいます。
かつての金融業界なんかがそうであるように。
あとは衰退あるのみ。そういう道をたどりたいのか、自己否定をちゃんとしながら成長していくことができるか否かが、その業界の地位を決めるのだと僕は思っています。
<追伸>
というようなことを、会社でいかに作り上げていくか。そこに挑戦するのも、悪くはないと思っています。少なくとも今の僕にとって。