経営で一番大切な「嘘をつかない」という難しさ

経営戦略, 経営者向け

僕が関わらせてもらう企業を見ていて思うことは、経営においてはつくづく「嘘をつかない」ということが大切で、そして一番難しいのだということ。

嘘というのは、意識的に(わざと)つく嘘から、それこそ無意識的につく嘘まで幅広い。

例えば、企業の売り上げが8億円だったとして、「うちは年商約10億円です」というのも嘘。これはわかりやすいけれど、意外とよくやりがちな嘘で、余分な背伸びは関わる人たちを幸せにはしないよね、という。

あと、僕がよく出す例で「社内に対する嘘」というものがある。

これは「うちの会社は新しく挑戦することを推奨します!」と言っているのだけれど、蓋を開けてみると新しいことに挑戦して失敗したことを罰する社内の制度になっている会社。

これは本当にあるあるで、失敗した人を罰することはせずとも、失敗歴があると昇進させない、とかね。

これは中小企業から上場企業まで多くの企業がやっていることで、僕からするとこれは社内に対する嘘をついていることになる。

誰が悪いって100%経営が悪い。経営側が嘘を嘘だと気づかずに平気で嘘をついてしまっていると、役員や部長がそれを見て真似をして、課長以下、メンバーの人たちもそれを見て真似をするので、その会社は嘘つきの会社になってしまう。

何がやばいって、それが嘘だと気づいていないところだよ。

「いや、うちは昇進させたいとは思っているけれど、挑戦したか否かは評価制度で評価できない」という会社も多いはずだけど、それなら評価制度を変えてしまうか、評価できないなら最初から「挑戦を推奨します!」とか言っちゃダメだって。

どこの誰が、新しいことをやったり挑戦して失敗したら評価されない、でも今までと同じことをやっていたら出世するというのが本音の会社の中で、新しいことをやろうと思うのか?

それでいて「うちの社員は新しいことをやろうとしない」って言ったところで、当たり前だよねという話。

本当にあるあるすぎて笑えないのだけれど、身に覚えのある人も多いんじゃないかな?

崇高な理念はいらない。評価制度で社員は動く

ここ10年くらいかな?やたらと崇高な「理念」や「会社のビジョン」や「ミッション・バリュー」etc..のような言葉が溢れてきたけど、「私たちは誰よりもお客様第一で行動します」に類する崇高な理念を掲げている会社に限って、顧客思考ではなく自分たち第一主義だよね。

なんで「顧客第一」と叫ばなければならないかって、それだけ後ろめたい事業をやっているからなんだ。

なんで顧客第一主義を謳っている会社が、社外から電話がかかってきて平気で「いま、会議中です」とか言えるのか?それは社内第一主義ではないのか?

「そんなことくらい」と思うだろうか?僕からすればそれこそ嘘つきだと思うのだけれど、そうは思わないだろうか?

それなら別に崇高な理念などいらなくても良いから、言行一致、きちんと言ったことをやり、やれることを言い、やれないことは言わない。ヲッ徹底するだけで、必ず信頼を築いて事業は成長していく。

見ているところが違うし、大切にしていることが違うんだ。

5個も10個も、場合によっては20個も30個も社訓なり会社の掟みたいなものを掲げても、誰も覚えていなかったり体現していなかったら無意味なんだって。

そんなものはいらないから、本当に大切にしているものを1つ、せいぜい2つ、やり続けるだけで気づいたら突出しているって。

 

ここだけの話、社員を動かすのは難しくない。

「評価制度」を変えてしまえば、必ず社員の行動は変わる。
だって、1日8時間もの時間を費やすのだから、評価されるものに取り組んで、評価されないものには取り組まないに決まっている。

そうではない社員もいるけれど、例外は個別ケースで対応すれば良い。

基本的に会社の評価制度というのは、「会社は社員の方にこういう頑張りを評価しますよ」というメッセージに他ならない。

会社の想いも立派で良いが、そのメッセージは評価制度に組み込まないと意味がない。

評価しない評価制度なら、なくて良いじゃないか。むしろない方が良い。

評価制度とはつまり「お金」と「人事」のことである

会社が社員を評価するというのは、具体的には「お金」か「人事」の2つ以外はあり得ない。

「よくがんばったね」といくら褒めたところで、1円もお金に反映されなく、かつ一切の人事に反映されなかったら、その評価はそれこそ嘘つきだ。
もちろん会社には社員の給与に分配できる原資が限られているし、評価といっても全員を出世させられない。会社にそんなに席はない。

一番わかりやすいのは、社員の固定費を上げずに、賞与で還元するパターン。
半期や1年単位で、頑張った人にお金で報いる最も分かりやすい仕組みが賞与(ボーナス)である。

多くの中小企業を見ていて思うのは、実は社員の大半は「毎年ボーナスがもらえて当たり前」だと思っている人の多いこと・・

これは間違いで、そもそも賞与(ボーナス)というのは会社の業績に応じて変動するもので、業績が良かった年に関しては社員に還元しますと、という仕組みであって、毎年必ずもらえるお小遣いではないのだ。

社員の中には「賞与は毎年、もらえる金額が上がっていって当たり前」と思っている人もいるのだけれど、これはもうその社員にそう思わせてしまった経営者が悪い。
経営者の方々は、まず間違いなく絶対に「賞与はお小遣いではなく、会社の業績に応じて社員に還元するお金である」ことを明示しなければならない。

いかに評価の仕組みと、お金と人事を連動させるか。
それこそ経営者の腕の見せ所であり、会社というのは「お金」と「人事」という絶対的な権力を握っている代わりに、社員の方々に働いていただいているのだから、そこには頭を使おうよというのが僕のメッセージ。

またの機会に、僕が今関わっている企業で人事制度・評価制度を改善した話を書こうと思うので、お楽しみに。

 

いつも読んでくださって、ありがとう。

 

(追伸)
久しぶりにライアーゲームを見直してみよう。

(追伸の追伸)
以前お世話になった年商30億円の社長が「ゆってぃさん、経営っていうのはすべて洗脳なんだよ」と言っていた言葉が印象的でした。