人生において「手段の目的化」をしないために大事なこと
「社会に対して、貢献したいんです」という学生によく出会います。
就活生の志望動機で多いのは、
1)御社のこういうところに共感しました
2)スキルを身に付けて成長して、市場価値を上げたいんです
という2つです。
猫も杓子も「スキルを身に付けたい」「成長したい」「市場価値をあげたい」と言うようなことを語るのですけれども、本当か?と思う。そんな小さいことを言うなと言いたい。
今の世の中、どんな仕事をしたとしても、スキルが身につかない仕事はありません。
それでも新入社員で企業に入り、2年もしないうちに「スキルが身につかないから」といって転職をしていく人たちがたくさんいる。
本当にその会社にい続けてもスキルが身につかないのでしょうか?
さりとて、あなたが言うスキルって、どんなもの?
成長したい。市場価値を上げたいという。
それはわかる。
でも、大事なことは「なんで、あなたは成長したいのか?」と言うこと。
学生時代までは、「成長したい!」「こんなスキルを身につけるんだ!」というと、それだけで「すごいね」と褒められたのかもしれない。
もちろん時には「意識高い(笑)」と言われることもあったのかもしれないけれども、それでもやっぱり周囲の人からは「優秀だ」と言われたことでしょう。
でも、社会に出たら大きな言葉を掲げているだけでは、誰も評価してくれません。
評価してくれるのはただ一つ、成果だけです。そして成果に繋がる行動です。
「行動力だけは負けません」という抽象的なフレーズもよく目にしますけれども、ピアニストになりたい人がピアノの周りを一生懸命走り込んでも、意味がないのです。
サッカーで有名なモウリーニョ監督が言った言葉ですが、聞いたことはありますでしょうか。
大切なのは「なぜ、あなたはそれがしたいのか?」という本質的な問いかけです。
本当は一番大事なはずのその「なぜ?」を突きつけると、「そうですねぇ。安定して給料をもらいたいからです」という。
あなたの言うその、安定ってなんだ?という話。安定をして給料をもらいたいから、スキルを身に付けて成長して市場価値をあげたいの?と思うのです。
本当に人生で望んでいるの?
そのような人と話をしていると、ああ、この人は大人になるまでに、そういうちゃんとしたことを言ってくれる大人が周りにいなかったんだな、と思う。
その人が悪いというわけではないのです。成長したい、市場価値を上げたいでもいいけれど、「なぜ、あなたはそう思うのか?」「それをして、どうなるのか?」という問いかけは、常にし続けて欲しいなと思う。
なぜならば、目的なき方法論は、すべてが手段です。
そして、行く先が見えない努力は、時に間違った方向にあなたを押し進めてしまう。
「それもまた、経験」という見方も一つ。確かに意味のない経験というのはないのかもしれません。
でも、せっかくの人生、僕自身は正しい方向を向いた努力をしたいなと思っているのですが、いかがでしょうか。
何よりも圧倒的に大切なのは「Why?」を問うこと
「Whyからはじまるゴールデンサークル理論」というものがあります。
有名なTEDで語られたものなので、聞いたことがある人もいると思います。
これは僕が新入社員の時に書いたノートのメモ。
今でも、僕らの仕事の本質はここにあったのだと、改めて考えさせられるわけです。
世の中の9割の人は、「何をするのか(=What)」と言う話をし、次に「どのようにやるのか(=How)」を議論します。
上の図で言うと、外側から考えてしまっている。
けれども、何度も言いますが、それらは全て方法論であり、手段なのです。
先日、僕の大学時代の友人であり戦友であり、いまは自分の会社を作って東京で闘っている人と話をしました。
すごく優秀な方ですし、将来世に出てくるのは間違い無いと思っている。
そう言う人でも、やっぱり20代の若気の至り。「手段と目的」を混同してしまっているのだと思うのです。
やっぱり環境は大事。どのレベルで思考する周囲なのか、そういう人がいるなら良しだし、いないなら本なのか?会いにいくのか?手段を考えるのです。
社会に出て少しステージの上の方に行くと、社会はあなたに「じゃあ、どうするの?」とか「君は何がしたいの?」という意思を問うてきます。
それ自体は悪く無いのですけれども、ともすれば「〜〜します」と言わせるコミュニケーションになってしまう。
「自分で言ったのだから、やれよ」というのは明らかに本質から外れたコミュニケーションの場合もあるわけです。
「言わせる」コミュニケーションは、明らかにミスコミュニケーションです。僕も言われた経験がありますが、どれだけ上から目線なんだと思う場面も多々ありました。
昔、人材輩出企業と呼ばれたリクルートという会社がここまで大きくなった所以は、「お前はどうしたいの?」と意思を問う文化にあります。
全てはそこに根付いているのですけれども、実はこのコミュニケーションは間違った方法論を偶発しかねないのです。
リクルートのDNAというのは色々なところに根付いていて、ひとつ社会の中で大きなコミュニティとなっています。その価値と功績はもう多大なるものです。
その中で、「なぜ?」を深く問う文化がもう一つ前にきていたら、違う世界観になったのでは無いかと、今更ながら思うわけです。
と言うようなことを書くと、「いや、違う」とお叱りを受けることもあるかもしれません。切り取っているのですから、当然です。関係者の方、ごめんね。他意はないのです。
「じゃあ、どうするの?」というコミュニケーションは、「なぜ?」を自発的に問うことができる人。もしくは、その前提(背景)の共有ができている人の間において、有効であるものだと僕は思う。
(参考)
あの世界的なAppleを例に取った、リーダーシップについてまとめられている記事。
「Why?」を5回問うてみる思考習慣をつけよう
話が逸れましたが、目的以外は全て手段であり、方法論であると言うことを、常に問い続けて欲しい。
これは思考習慣です。
特にビジネスの最前線において「Why?」を構造的に問う力というのは、とても価値がある。
その思考フレームはある程度トレーニングすることで、できるようになります。
「構造的に」という部分は人の思考レベルによりますが、「Why?」を繰り返す思考習慣は、日々の積み重ねです。
ここからハウツーの話になりますが、経験則的に、「Why?」を5回問うことをお勧めします。
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20代で営業の仕事をしている人も多いと思います。
例えば、お客さんから「Webの集客に困っている」と言われたとする。
「なるほど!集客ですね。いやあ、ちょうどうちのサービスに良いものがありまして」
と話をするのが、典型的に売れないセールスパーソンです。
「なんで、集客をしたいんですか?」
と問う。その深掘りをする。
ビジネスにおいて「Why?を問う」をもう一段落して、大事なポイントは「前提条件」と「制約条件」の2つを確認することです。
具体的には5W1H。
いま(現状)がなにで、目的は何なのか。
その中で、どんな手段を取るのか?
いつまでに、なにを、どうやって、誰がやればよいのか?
ちなみに僕は入社をしてこの思考フレームを身につけるまで、半年近くかかりました。
就活生なら、
・なんで就職をしたいのか?(「就職」自体は手段。就職せずとも生きる生き方はいくらでもある)
・なんでその業界、その会社なのか?(「会社選び」も目的ではなく手段。あなたはなぜその会社を選ぼうとしているのか?)
・なんでその職種なのか(職種も方法論、言わずもがな)
というような問いをしていくこと。
そもそも、なんで働くのか?というような問いまでたどり着ければいいですね。
義務と権利の話とか。いろいろあります。
ただし、個人の内側に入っていく「なぜ?」は、やりすぎると行き着く先はほとんど限られているので、ほどほどにというのが僕からの注意点。
「承認欲求」か「コンプレックス」に行き着くことが多いからです。それはまた別の話。
===(結論)===
なぜ?(Why?)を問うことは大切。
なぜならば、目的以外は全て方法論であり、間違った手段を選ぶことは勿体無い!時間という命を大事に使おう。
そのためには、なぜ?を問いかける思考習慣をつけよう。
具体的には、「なぜ?」を5回問うてみる。
ビジネスにおいては、「前提条件」と「制約条件」が命。
大事なことだから、メモしよう。
長くなりましたが、ここまで読んでくださって、ありがとう。
Why?を問うことは、人生の目的を問うことです。
あなたの貴重な人生という時間を、何に使うのか?ということ。
人生の目的を問うことは、幸せに生きるための手段です。
意思なきところに、道は生まれないのです。
<追伸>
「目的、目的」と言ってきましたが、実は僕自身はもともと、目的思考の人間ではありません。
それでもなお、誰にも負けない強さが「好きだから、好き」「やりたいから、やる」という動機は、とても強烈です。
自分の内側から突き動かされる動機には、世の中一般的にいう「目的思考」なんかでは計り知れないエネルギーがあります。
好きだから好き。本当はそこには理由なんて、ないのかもしれません。
WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う
TEDで4000万回以上再生された講演動画 「How great leaders inspire action」から生まれた全米ベストセラー!
理念を掲げて社会を巻き込む力をもつリーダーには共通点がある。 それは思考を「WHAT」からではなく、「WHY」から始めるという点だ。
→ WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う
Amazonを築き上げたベゾスもものすごいリーダーシップと哲学を持っているわけですね。
哲学こそ真髄。
ジェフ・ベゾス 果てなき野望
インターネットに大きく賭け、買い物や読書の習慣を大きく変えてしまったアマゾン創業者、ジェフ・ベゾス。本書は、その奇才の生い立ちから現在までをベテランジャーナリストが追った物語である。フィナンシャル・タイムズ紙、ゴールドマン・サックス共催ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2013受賞!
→ ジェフ・ベゾス 果てなき野望