レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』を読んで 〜さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ〜

2019年1月5日書評(という名の感想文)

読みきりました。

レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』という小説です。

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面白かった。

わりと以前に書かれたミステリー小説(これは1953年となっている)の中では、抜群に面白い物語だと僕は思いました。(というか、最近のものを含めても面白い)

いわゆる、ハードボイルド小説というものですね。

フィリップ・マーロウという私立探偵が、物語の主人公です。

僕がここであらすじを書くと、どこかこの物語がチープなものになってしまう気がするので、それはやめます。

物語として、ここまで詳細に、かつ繊細に。そして強い物語性を持った小説を書くことができれば、それは小説家としてすごく楽しいだろうなぁ。

なんてことを考えながら読んでいました。

ひとつひとつの情景描写がやけに細かくて、すごくわかりやすい。

これ以上はないというほどの言葉を使って、読んでいる僕らに対してありありとイメージすべく、語りかけてくる。

その情景描写が緻密すぎて、その文体が独特なところは好みがありそうですけれど、僕は好きです。

僕はもちろん小説はかけませんが、こういう小説を読むと、なんだか自分も物語を書いてみたいと思えてきてしまうから不思議ですよね。

僕はどちらかというと、以前はこういうハードボイルド系の小説というのは、苦手でした。

なんでだろう。

多分、淡々としすぎていること。そしてあまりにもリアル感がある非リアルという感覚が自分の中にあって、なかなかすんなりと小説を読むことができない時期もわりと長い期間ありました。

10代後半くらいの数年間でしょうか。

それまでの時期というのは逆に、いろんな物語を自分自身の中に通過させることによって、自分とリアルな社会とを考えたりもしていたのですが、ある程度自分の自我であったり、思想みたいなものが強くなり始めた10代半ば頃から、向こう側にメッセージ性が秘められたようなもの。直接的に訴えかけるのではなくて、物語を通して相対的に「何か」が浮かび上がってくるようなものに対しては、なぜだかすんなりと受け入れることができませんでした。多感過ぎたのでしょうか。

いや、面白いんですよ。もちろん。

面白いんだけれど、なぜかそれが自分の中に入っていかない時期というものがあって、僕がこういう物語を手に取ることができるようになったのは、つまりはきちんと”読む”ということができるようになったのは、大学生になってからでした。わりと最近のことですよね。

そしていまは、どちらかというと多くの物語を僕自身が欲する時期にあります。

この1年くらいでしょうか。

逆にそれまで読み漁っていた、いわゆるビジネス書であったり、という種類のものはなかなか入っていかなくなって、そういった直接的なものではなくて、物語なんです。

物語という中で描かれている世界観に、いまはすごく反応する。

という意味でいくと、この『ロング・グッドバイ』という小説は、その乾きみたいなものにすごくいい潤いを施してくれる物語だと思います。

うまく表現できているかはわかりませんが。。

小説、物語の中で、もう一度読みたいと思えるものに出会えるのは、わりと珍しい。というか、ほとんどない。

そういう意味で考えると、もう一度手にとって読んでみたい、これから先になんども読んでみたい。

そんな風に思えるこの小説と出会えたことは、良かったなと思っています。

あんまりまとまった感想ではない気もしますが、興味のある方はぜひ、手にとってみてください。

ありがとう。