経営者のアタマの中を見る

2021年1月4日マイビジネス, 経営者向け

「経営者は孤独である」と言う言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
実際に経営者と対峙する経験を重ねると、その言葉の重みを痛感せずにはいられません。

社内では本音で語れる人もいない。
ベンチャーや中小企業であれば、創業メンバーがいる場合も多いですが、数年が経つにつれて、なかなか本音で話すことが難しくなっていきます。

足元で経営者が不安なのは、いま社長自身が考えていることが正しいのか。もっと他に良い選択肢がないのか。この戦略で良いのか、客観的に見るとどうなのか、他社や他業界と比較するとどうなのか、ということです。

経営者は他の経営者同士と語る機会も多いのですが、肝となる部分についてはなかなか触れることが出来ないというタブーがあります。
肝というのは戦略の肝、従業員の採用と給料、といったタブーに近い部分です。

こうした場合、経営者の相談相手となるのは大抵の場合、税理士や顧問弁護士、あるいは社外顧問・経営コンサルタントといった限られた人たちです。

彼らが経営者に対して提供する安心材料は、一つにはもちろん「専門性」ですが、専門性があった上でのプラスアルファは「相対比較」です。

例えば、他社や他業界では、こんな採用を行い、社内の仕組みはこういうところがポイントで、幹部の育成はここに注力しています。
お金周りはこういう考え方がヒントで、中長期の戦略として〇〇に投資をするケースが多いです。
と言ったような内容です。これらを一般論ではなく、実際のテニヲハまで踏み込んだ具体的な事例として持っている外部アドバイザーは、経営者にとっては非常に大きな価値となります。

もちろん守秘義務の観点で話せないことも多いのですが、具体例をある程度抽象化し、その企業や経営者に合わせて伝える。
相対比較の基準を提供することで、さすが経営者は自身の頭の中をクリアに整理し、自社に合わせて落とし込むことができるようになります。

僕が外部として関わる中で、経営者にとって最も価値だと感じていただいていた点はまさにここにあります。

例えば、僕が月2回、15万円で経営者の方とディスカッションをすると。
経営者にとっては、新入社員の給料よりも安いフィーで、

・他社や他業界の事例と比較基準を手に入れる事ができ
・自社の立ち位置を相対的に明らかにすることができ
・その結果、自身の頭の中をクリアに整理する事ができ
・自社に合わせた個別の提案まで受けることができる

と言ったメリットが得られるわけです。

テーマは幅広くありますが、僕が主で提供していたものを大分類で考えると、

1、会社全体の業績、方針について
2、営業手法(提案営業/コンサル営業)とマーケティングについて
3、組織、人事制度について
4、情報習慣について

の4つが軸としてあります。

1,会社全体の業績、方針について

まず1つ目は、会社全体についてです。

特に中小企業の場合、業績の低調が原因で外部顧問などを依頼するケースが多いわけですから、会社全体の現状を改めて一緒に整理していきます。

ポイントとなるのは、「事業計画があるか否か」と、「経営者が考えている問題と課題の整理」の2つです。

事業計画については大雑把にある場合と、ない場合がだいたい半々くらいでしょうか。

事業計画と一言に言っても「経営戦略」的な上段の話から、足元直近3ヶ月の取り組み事といったことまで幅広くあります。
本来、経営者が取り組むべきポイントは、会社の方向性を定め、具体的な事業計画として落として行く部分までですが、現実的には足元の取り組みや改善に経営者が関わっているケースも多い。

僕が関わる場合は、もちろんまずは全体から入りますが、足元の取り組みについては出来るだけ仕組み化し、他の人に渡して行けるようにすることを考えます。

それはつまり「経営者でなくともできる仕事」を他の人に権限移譲し、「経営者でないと出来ない仕事」(=優先度が高い仕事)に割く時間を確保できるようにするということです。

細かい話ですが、経営者でなくともできる仕事を他の人に渡すためには、「権限と責任」を明らかにし、その取り組みを評価する仕組みと、その取り組みができる人を見定め仕組みとして渡せるようにする、といったことをしなければなりません。

ようは「他の人でも出来るようにし」「他の人がやったことを評価できるようにする」ということです。

 

話は少しそれますが、会社経営をする上で最も大事な仕組みは「評価制度」であると私は考えています。

ぶっちゃけた話、中小企業に勤める社員が求めるのは第一に「給料」、第二に「承認欲求」ですから、その他のやりがいとかスキルとか市場価値と言った話は一旦考えなくても良い。

社員がやったことを適切に評価し、社員を承認し、給料や賞与に反映させる仕組みを作る事ができれば、経営者の仕事の半分は完了したようなものです。

経営という観点で見れば、中長期的には、社長自らが動かなくとも会社全体が回る仕組みを作らなければ意味がありませんから、評価の仕組みを整え、きちんと運用できるように言行一致させることが何よりも大切になってきます。

「問題」と「課題」を正しく捉える

次に経営者が考える「問題」と「課題」について。

よく誤解されますが、「問題」と「課題」は異なりますし、そこを混同すると全く的外れな施策を考えてしまいます。

問題とは、現状と理想の差分のことです。
課題とは、問題を要素分解したものです。

問題を正しく定義するためには、「理想の状態」を鮮明に定義する必要があります。
鮮明にとは、方向性と定量化の2つが揃っていることです。

例えば「会社の売上を1.5倍にする」という目標を当面の「理想の状態」と考えたとしましょう。(あるあるの目標ですね)
これはまず100%失敗しますし、うまく言ったらそれは「たまたま・なんとなく」であり事業計画に基づいたものではありません。この場合でいうと、


・時間軸がない(売上1.5倍は、1年後?or 3年後?or 10年後?)
・なぜ1.5倍なのか?それは妥当なのか?
・その分の売上は、どの事業で作るのか?(売上ポートフォリオという考え方)

と言ったことを加味しないと、目標にはなりえません。
特に時間軸は大切で、定量化の大きなポイントになります。

また、問題を考える際のポイントは、「現状」の中にもたくさんの課題が潜んでいるということです。現状そのものが穴ぼこだらけなので、いくら理想との差分を埋めようと思っても、積み上がっていかないというケースはよくあります。

例えば、会社全体として営業を強化したいと社長が考えました。

営業マンを張り、営業プロセスを管理出来るマネージャーを採用したとします。
「この営業計画通りにやれば、営業売上が伸びる」という予測のもとで1年間取り組んだ結果、全く成果に繋ががらなかった・・というケースはよくあります。

「営業計画は現実的だし、営業マネージャーも優秀なのに、なぜ・・?」
と振り返りをしたと仮定して、この場合は何が良くなかったのか。

いくつかの可能性がありますが、1つは「営業マンのそもそもの能力不足」が挙げられる場合。
これは典型的な「現状の穴ぼこ」ケースにあたり、絵に描いた営業計画と、その実行をマネジメントする管理職が、全く活きない事になってしまいます。

本来であれば、営業マンのコミュニケーションスキルの改善から始め、営業計画に着手するのは2年後でないと難しかったにも関わらず、無理な営業マネジメントを行った結果、全く結果が改善されなかった。
あるいは、そもそも営業マンとして張る人材に適正がなかったのであれば、採用自体を見直す必要があり、採用を見直すためには社内の人事制度を早急に整える必要があった、というケースも数多散見されます。

経営者が考える問題と課題は、大抵は間違っている場合が多いです。
正確に言えば、大まかなポイント自体はズレていないものの、社長が想定する粒度とは全く異なっていたり、「現場の本音はこんなところにあったのか・・」と頭を抱えるケースが多いということです。

だからこそ、経営者と一緒になって適切に「問題」と「課題」を定め、その解決に向けて伴走することが出来る外部パートナーの価値があるわけなのです。

 

内容を詰め込みすぎですが、もう1点。

「問題」を正しく捉えられないときに多いのが、そもそも「理想の状態がわからない」というケースがこれまたよくあります。

「嘘でしょ!」と思う人も多いはずですが、実際に「そもそも何を目指してよいか分からなくなってしまった」となる経営者は多い。

いや、それはもちろん「売上は多いほうがいいし」「利益も出ている方がいいし」「事業は伸びている方がいいし」「社員は辞めないほうがいいし」「コストは抑えられたほうがいい」というのは、そのとおりなのです。

でも、それらを解像度高く、定量的に、かつ自社の適切な理想状態として定義するのは難しく、経営者の頭の中にはその材料が足りていない(=曖昧)な場合も多いのです。

その場合に有効になってくるのが他社の事例であり、他業界の情報なのです。

いま、世の中はどこに向かっているのか。どういう変化の波が起こっているのか。
自分たちの業界の変遷については多くの経営者が肌感覚を持っていますが、他社の具体的な取り組みや、他業界の変遷までアンテナを張り巡らせている経営者は多くないというのが私の感覚です。

ましてや中小企業の経営者の場合、目下足元の取り組みや改善に時間を割いているのであれば、どうしても時間的な制約を受けてしまいます。

だからこそ、情報の風を外部から取り入れる。自社の立ち位置を相対化して、何を・どこまで目指すべきなのかを判断する材料を集めましょう。

「今どきの若者はよく分からない・・」と言っていませんか?それを言い出したら、少なくとも経営者としては寿命僅かであるという危機感を持って下さい。

10代、20代が次の市場を作っていくのです。
ゲーム、SNS、スマホのアプリ、流行っている漫画やアニメ、TV番組、アイドル、学校の文化、若者の価値観。
あるいは女性誌、ファッション誌、サブカル文化に定期的に触れていますか?YouTubeもNetflixも見ていますか?その中で何が流行っていますか?その理由に持論を持てていますか?

「そんな時間はない」というのもよくわかりますが、事実としてそれら全てがマーケティングであり、情報習慣です。それらを見て世の中は動いているのです。

それらの情報をリアルに体感しているのは、20代の僕の最大の強みです。笑

別に世代格差を訴求するわけではありませんが、ビジネスと身の回りのことを繋げて考え、次の時代を創っていくのは若い世代です。
同時に、世の中の変化を見極め、経済を創っていくのはオジサマ世代であり、経営者の役割なのですから、情報習慣には投資をした方が絶対に得です。

そして何よりも、世の中の変化の波に乗っかるほうが、楽しくないですか?

と僕は思うのですが、いかがでしょうか。

長くなってしまいました。

改めてですが、僕が提供する4つの大分類があります。(4つ中、1つしか書けませんでしたが)

1、会社全体の業績、方針について
2、営業手法(提案営業/コンサル営業)とマーケティングについて
3、組織、人事制度について
4、情報習慣について

残りはまた別の記事で書きたいと思います。

まとめ。僕自身の経験をもとに、企業のお困りごとと、その解決策について。
僕自身の頭の中にあるノウハウをちゃんと言語化して棚卸しを行い、積み上げていく意図で書き綴っていきます2021年。

という宣言の一歩目でした。読んでくださって、ありがとう。

個人コンサルのご相談はこちらのお問い合わせページから。

(追記)
続き「2、営業手法(提案営業/コンサル営業)とマーケティングについて」はこちらから。