自動運転車が人を轢いたら責任はどこにある・・? 未来を見据えて新しい弁護士像のあり方を考える

思うこと

士業の代表である「医者」「弁護士」という職業って、実はコモディティになっているよね、と言う話。

少し前に、瀧本哲史さんの『僕武器2020』をテーマに書いた記事の中でも少し触れたのですが、今の時代において(一般的な)「優秀さ」と「市場の価値」と言うのは必ずしも比例しないよね、ということの面白さについてもう少し詳しく書いてみようと思っています。

そのためにはまず、「価値」というものが、資本原理においては「需要と供給」のバランスで決まるよね、と言う前提がありまして。要は、

求められる数(=需要) > 供給される数

という状態だと、価値が高くなるし、それに応じて例えば商品なら高く売れるわけです。作る数よりも求められる数の方が多いわけですから、そりゃあ値段は高くなりますよね?

これが逆になると、もちろん価値は下がるし、求められる数よりも作られた製品の数の方が多いわけですから、当然商品の値段は下がるわけです。

ここでは例えば「商品」を考えたので「値段」となったわけですが、これが商品ではなく「人」だった場合は・・?

そう、稼げる額に直結するわけで、たくさんお金を稼いでいる人というのはどういう人のことかというと、たくさん求められるのだけれど数が少ない状態(スキルや提供するサービスなどの価値が高い)ということになるわけです。

毎年9,000もの医者の卵が生まれる

医学部になるまで熾烈な競争をし、医学部に入ってもたくさんの勉強をがんばった医学部生たちがいます。

彼らが医者になるためには、医師国家試験という国家資格を突破する必要があるのですが、めちゃくちゃ難しそうなイメージがある一方で、実は受験者の9割ほどは合格するという試験だということを知っている人は多くはありません。

そしてさらに、医師国家試験を突破する人は、実は毎年9,000人ほどいるという結構衝撃的な事実を知っている人はさらに少ない。

9,000人ってどう思いますか?多いと思いますか?(思ったより多いよね)

例えばその9,000人の医者の卵たちは、成績順に並べると綺麗に一番から9,000番まで序列がつきますよね。それは成績順なのですから、当たり前の話。

でも、その中で誰がいちばん稼ぐかどうかとなると、成績の序列順にはなっていないというのは想像に容易いことだと思います。

そして9,000番目の人の方が案外、美容整形クリニックなどを開業し、たっぷりと稼いでいる、というようなことも割と普通に起こり得るわけですが、それだけ美容整形クリニックを求める人たちが世の中にたくさんいるからこそ可能になるわけですよね。

(美容整形は例えば、の話です。他意はありません・・)

何が言いたいのかというと、安定・エリートの代表格であるような医者という仕事も実は、よほど特別なスキルがない限りは、資本主義の構造に消費される側の立場である、という事実から話を始めたかったということです。

弁護士事務所も営業力がないと食べていけない時代

予言的な意味合いも込めて、これから求められる弁護士像についても今の僕の意見を書こうと思う。

これまた以前の別の記事で、「ヤミ金・サラ金が淘汰されたのは、消費者が賢くなったのではなく、弁護士の数が増えたから」ということを書きました。

要は市場の中で「払い戻しがビジネスになる」と気づいた誰かがいて、それをビジネスに広げた人たちがいたからこそ、僕らみたいな一般人でも「今のヤミ金融はやばいよね」という認識を当たり前に持てるようになったのです。

その事例から学べることは、弁護士事務所は新たな仕事領域を「作り出していく」必要があるのだということ。
「見つける」のではなく「作り出す」あるいは「見出す」だと思っています。

 

上の記事では「ブラック企業問題」についての弁護士領域が次の時代に来るだろうという話を書きました。
ゆってぃの未来予測宣言です、2020年以降は「ブラック企業から残業代を払い戻しましょう」というCMが流れるはずです。

あとは、数年先の未来で例えば「自動運転」が実現した時に、自動運転の車やバスが事故を起こしたとします。

その時に、法律的に悪いのは誰ですか?どのくらいの過失の割合ですか?
ということを弁護する領域は確実にきます。

自動運転者が事故を起こしたとして、悪いのは乗っている人(=運転者?とは言わないなw)なのか、車メーカーなのか、5Gによって動いているはずなので通信会社なのか?制御するソフトを開発した会社なのか?とかね。

あるいは医者が不要になった時代で、手術ロボットが成功確率99%の手術をしたとして。

100人に1人は「何らかの要因」によって亡くなったとした時に、その責任はどこにあるのか?(病院?ロボット開発メーカー?AIソフト開発会社? それとも、オペリスクの範囲なので誰も悪く無い?本当にそうだと言い切れるのか?)

今は簡素化して書きましたが、一つの自動運転車を作るのに、何十社もメーカーが関わります。手術ロボでも同じこと。
もし何かがあった時に、誰が・どのように司法を考えるのか?その実例・判例はどうするのか?

そこが弁護士の新たな仕事領域のはずですし、あるいはそういうリスクを排除するような企業向けコンサルティングをする弁護士も今後登場してくるはずです。

労働者が今後「ブラック企業から残業代を払い戻そう」とする中で、今度は逆に企業に対して「労働者から自社を守る法律的観点」を提供する弁護士の価値が(相対的に)上がるというのも容易に想像できます。

みたいなね。

僕らが今の日本、あるいは世界の中で生きているというのは、資本原理の仕組みの上で生きているということなのです。

であれば、やっぱり需要と供給で価値が決まるし、一度誰かが見つけた領域は時間と共にコモディティになるわけで。

そこで求められるマーケット感覚みたいなものは、これからの時代を生き抜く上で最も大事な要素の一つなんだろうなと思うのです。

大事なことは、いろんな情報に触れ続け、世の中を常に構造的に捉えられるようにすることなのではないでしょうか。

でないと、いつまで経っても搾取される側に居続けますよ・・という話。