【読書評】瀧本哲史さん追悼『僕は君たちに武器を配りたい』に学ぶ、人生100年時代の生き方

2019年10月27日就活概論(考え方), 働き方・キャリア, 書評(という名の感想文)

京都大学准教授で、エンジェル投資家でマッキンゼー出身の経営コンサルタントの瀧本哲史さんが2019年8月に亡くなりになりました。

コンサル業界ではかなり著名な方で、メディアなどにも露出されていたので知る人ぞ知るという方。
特に東大、京大で教鞭を執る傍ら、その天才的な頭脳を後世に残そうと執筆や講演活動、育成などにも注力して活動をなさってきた方です。

有名な著書の中に『僕は君たちに武器を配りたい』という本があるのですが、僕が大学時代に読んで「なるほどなあ」というくらいに思っていたけれども、改めて読み返してみると、実はこの本は2011年に書かれているんですね。

今から8年前に書かれている本は、ようやく今の時代に沿った本質を説いている未来への提言書となっていて、まさに2019年を透視した可能ような瀧本氏のあまりの慧眼(けいがん)に脱帽させられました。

そこには人生100年時代と言われる現代を生きるヒントが満載。

NewsPicksでも『僕武器2020』という再特集が組まれていて、また、コンサル業界の様々な方々がメッセージを込めた文章を公開するなど、影響力の大きさが伺い知れます。
そんなビジネス業界全体が注目する瀧本氏の頭脳に迫ってみたいと思います。

 


僕は君たちに武器を配りたい Kindle版(瀧本哲史)
東大、マッキンゼーを経て、現在、京大で絶大な人気の瀧本先生が、新しい経済の流れで、自分の力で道を切り開き、ゲリラとして生き残るための「武器」について、投資家としての経験から、語ります!

僕は君たちに武器を配りたい

 

 

人材業界からみる「専門家(エキスパート)」の価値

瀧本さんは、経歴的には超の付くエリート。
東大法学部を卒業し、ロースクールの助手を経てマッキンゼー、その後、日本交通社の経営へ参画、同社のターンアラウンドを経験し、エンジェル投資家へ。
京都大学にて準教授として教鞭を執る傍ら、投資活動、執筆などをしていた方です。

瀧本さんが一貫して主張している重要なポイントというのが「資本主義の本質を理解しよう」ということ。

『僕は君たちに武器を配りたい』という本のタイトル、メッセージにもある通り、これから社会に旅立つ若者たち、あるいは旅立ったばかりの若者たちに向けて、この生きづらい日本社会を生き抜くための「生き方のススメ」を書いています。

そしてその上で重要になってくるポイントというのが、まず社会のルールを理解しようということ。
そしてその社会のルールを知るということはつまり、資本主義の本質を理解するということなのです。

例えば、これから社会に出る若者たちの大半が、これだけ不安定だと言われる社会の現実と向き合った時に、どういう風に考えるかでしょうか。

多くの人たちがまず「安定しよう」と考えます。
その次は?

「安定するためには、どうしたら良いか」と考えた結果、親や教師の意見を参考にし、「よし、これからの時代において通用するスキルを身につけよう」という発想に行き着くわけですが、ここからもうすでに社会の罠にかかり始めていると気づく人はそう多くありません。

「成長できる会社」「安定した企業」「スキルを身につけよう」「自分がやりたいことをやれば自然と成長する」etc..

そういう安易な発想からくる最も多い結論は「何かの専門性を身につけよう」ということです。

ですが、専門性を有した人、つまりはエキスパートの人たちというのは、これからの時代、生き残っていくことができなくなる。

これが資本主義の本質です。

(NewsPicksに特集が組まれていました!引用元はこちら

理由は明確で、市場原理の法則的に「専門性」というのはよほどのものでない限り、コモディティ化してしまうからです。

分かりやすいのは、「士業」の専門性。

弁護士も、税理士も、医者も看護師も薬剤師も、どれほど優秀であったとしても、市場の需要に対して供給過多となってしまうと、結局はお客さんに
「あなたと同じことが出来る人は世の中にたくさんいるので、安いところに行きます」
といわれてしまう時代なのです。

それを「コモディティ化」と呼びます。

価値や値段は、資本主義的には「需要と供給」で決まるという話を聞いたことがある人も多いはずです。
どれほど優秀であったとしても、「需要(市場に求められる数)」よりも「供給(排出される数)」の方が多ければ、市場においては価値は下がるというのは当然の帰結です。

需要 < 供給

の構図だということですね。

 

僕が所属する会社が扱っているのは「情報」であり、コンサルティング業界とはつまり「情報の落差」によって価値を生み出すというビジネスをしているのですが、情報ビジネスも、コンサルティングという形の見えないサービスも、
条件によってはコモディティ化する可能性が高いということだと考えます。

というのも、情報は今の時代、ほとんどの人が手に入れられるようになっており、昔は「この組織にいた人しかわからない」というような職人芸やスキルが存在していたのですが、今はその「特別な専門性」というものがどんどんと薄くなってきている。
言い換えれば、専門性で差別化をするという発想が通用しなくなってきており、知的ビジネスとされる領域でもすでに数多のビジネス書が出版され、誰でも簡単に知的財産を手に入れられる世の中になってきているというわけなのです。

※いまはコンサルティング業界全体がコモディティ化に向かっている、よほどのことでない限り、値段勝負になりがち。以前は情報の落差によってビジネスが成立していた状況が、市況の変化で不成立になっているわけです。


僕は君たちに武器を配りたい Kindle版(瀧本哲史)
東大、マッキンゼーを経て、現在、京大で絶大な人気の瀧本先生が、新しい経済の流れで、自分の力で道を切り開き、ゲリラとして生き残るための「武器」について、投資家としての経験から、語ります!

僕は君たちに武器を配りたい

 

これからキャリアを考える大学生以下の人たちにとっても、昔ながらの「勉強をして、いい大学に進学をして、難しい資格を取ったりして、スキルを身に着けたい」というような人生の考え方だと、気づけば10年後にはその職業は淘汰されている、、、という時代が来てもおかしくないよということです。

一昔前までは、例えば大企業に就職をする以外の選択肢として、専門家としての生き方が良いと謳われていたわけです。スキルを身につけようよ、と。

美容師、調理師をはじめとする資格系の職業、あるいは開業医や開業弁護士などがその代表格みたいに思われていましたけれども、今はむしろ個人事業主として経営的なセンスが求められる。

ようは、お客さんを獲得し続け、開業したお店(や病院)を経営をしていかなければ、生き残れないわけですよね。

ITエンジニアや語学なども同じで、スキルを身に着けられればどこへいってもやっていけるよ!と世の中を煽っているのは、資格発行を生業とする企業や専門学校、資格学校であって、本当に生き残っていける人たちというのはむしろエンジニアスキルではなく「マーケット感覚」を持っている人だと考えますが、いかがでしょうか。

マーケット感覚とは、流動的な市場(世の中)で物事の価値を正しく捉えられる力のことを言います。

コンビニで1本100円のコーラが、ホテルリッツカールトンだと1杯1,000円するというのは、それだけその場所に「価値」があり、その価値に対して10倍もの対価を支払っても良いと人々が感じるということ。
それを適切に見極め、「1杯500円は安いな、でも、1杯2,000円だと高いな」とわかったうえで適切な値段設定ができ人が「マーケット感覚」があるということなのです。

企業も個人も新たな生き方をしなければ生き残れない時代になっている

日々あらゆる業種・業界の人たちと対話をする中で感じることですが、結局世の中の大半の企業も、そしてそこに所属する人たちも「模範解答に従えば、正しく生きられる」と思っている。圧倒的にそう思っている。

それが如実に表れているのが「どうすれば良いのか」という思考回路です。

その前提にあるのは「正しいとされる解答があり」「その解答通りにやれば褒められる」という思考、そう学校教育の延長線に社会で生きるということを描いてしまう環境です。

その極みが「スキルや専門性を身につければ、一生安泰」という考え方ですが、資本主義的な発想でいうとそれはむしろ自分で自分の首を絞める考え方だということは上に書きました。

 

で、あるならば、何をヒントに考えて行くべきなのか。

例えば企業においては、従来のビジネスモデル以外において、上記のような「マーケターとして」「インベスターとして」という生き残り方は、企業としてある一定の基盤としての規模感があれば業種・業界によらず、可能性があるのではないかと考えるわけです。

一つの例をとって考えてみましょう。

良い例になるので、人材業界を例にとってみます。
(個人の市場価値だとかスキルだとかを適切に見極めるのが専門なのは、もちろん人材業界にいる人たちだ、と仮定するところから来ています。その正しさの議論については別の話・・)

人材業界でいうと、業界の雄であるリクルート社が銀行(バンク)事業を展開していますが、同社はもともとファンド機能を自社内に持っており、事業の芽を見つけてはインベストの対象として事業を育てていくことをやっておりました。

人材業界大手の企業であるパーソル社も池田泉州銀行との提携などを推進しているわけですけれども、事業会社が銀行(バンク)の機能を持つまでは行かずとも、ファンド機能(投資機能)を自社内に保有をし、ビジネスのタネの段階からスタートアップを見つけてきては投資をする、というような事業可能性を秘めているわけです。
(実際にやるのはとても大変だとは思いますが・・・)

これがいわゆる「マーケットに求められることを(マーケッターとして)」「投資(インベスト)をするポジションを取る」という考え方の一つです。

業界問わず、新たなビジネスモデルとして、その行き先をマーケット感覚に見出すという考え方は、これからの時代主流になると僕は考えています。

企業だけではなく個人も同じで、世の中がどう変化しているのかという情報を自分で収集し、いろんな人にあったりネットワークをしながら、自分の頭で考えた情報を発信し続けるということがより大事な時代です。

それが資本主義的な市場でもっとも大事な「マーケット感覚」を磨くことにつながり、その感覚があればどういう時代変化をしたとしても、自分の立ち位置を築き上げることができます。

更に言えば、「マーケット感覚がある」=「資本主義の中でのお金の本質とは?という視点を持つことができる」に繋がるわけで、何かに投資をするという選択肢も持つことができます。

投資をするというのは何も金融や不動産だけではなくて、事業、人、出会い、時間、経験など、色々な選択肢を持つことができ、その選択肢の数だけ生き方が増えるようになるということです。

まとめ〜資本主義の本質を学ぼう

「スキル」はコモディティ化するので、常に市場起点で「需要と供給」を考えながら自社、事業、そして僕ら個人として自分自身のポジションを取ろう。

資本主義の世の中に生きる以上、「価値」は市場原理で決まるのだから。

その上で、いつの時代も生き抜くことができる武器を手に入れる努力はしようね、そのための情報を手に入れようとすることは大事です。

世の中が変化しているという情報を自ら取りに行かない人たちは、これからますます時代に取り残されていきます。
それは、そういう人たちの発想の根底には「でも、自分はこういう生き方をしているから大丈夫」という前提があるからです。

でも、その前提というのは5年、10年単位で簡単に書き換わる時代なのです。

10年前にiPhoneが出てきた時、今の時代を想像することができましたか?

5年前、携帯の通信回線が3Gから4Gになった時、電車に乗りながら常にYouTubeを見ながら情報を収集する時代になるとは思っていなかったでしょう?

僕らが生きる現代とは、そういう時代なのです。

これから先、10年ひと昔とした時にそれが10回繰り返されるような、人生100年時代を生きているのです。
その中でも変わらない普遍的な原理を知ろうとし続けられれば、きっと自分で自分の人生を選ぶことができるはずです。


僕は君たちに武器を配りたい Kindle版(瀧本哲史)
東大、マッキンゼーを経て、現在、京大で絶大な人気の瀧本先生が、新しい経済の流れで、自分の力で道を切り開き、ゲリラとして生き残るための「武器」について、投資家としての経験から、語ります!

僕は君たちに武器を配りたい

 
本当の資本主義社会の到来ですね。楽しみです。

これから社会に出ようとしている方は下の『ミライの授業』という本もおすすめ!ぜひ読んでみてください。


ミライの授業  Kindle版(瀧本哲史)
「私の著作活動は、この一冊のためにあった」――ベストセラー『僕は君たちに武器を配りたい』の著者・瀧本哲史さんが全国の中学校を訪れて開講した特別講義「未来をつくる5つの法則」のエッセンスが本になりました。これからを生きる14歳に、そしてかつて14歳だったすべての人に届けたい一冊です。

ミライの授業