なぜ「まずは店舗を作って物を売る」という発想が失敗を生むのか

挑戦するセールスパーソンたちへ, 働き方・キャリア

最近「自分も個人でビジネスをしたいんです」という人の話を聞くことが多い。

どんな大企業に勤めている人であっても、一度、個人で世の中に出てみると、世間の風の冷たさに驚くことが多いと思う。
これは一度、経験したことがある人でないと分からない感覚。

目先の一円を稼ぐ難しさ、大切さというのは、自身で事業を何かしようとトライした人は痛感していると思う。

僕が思う大事なことについて書いてみようと思う。

マネタイズを先延ばしするアイディアに価値はない

まあ極論っぽく書いてみたのだけれど、個人がビジネスを考える際に最も重要なのは「目先の粗利を稼ぐこと」である。起業となれば尚更だ。

失敗する人あるあるとして、「まずはビジネスモデルを考えて」「場合によってはここで借入をして」「ここまでサービスが大きくして」「ここで利益が出る」というような考え方をする人。

この考え方で上手くいく人は、ほぼいないと知ろう。
上手くいっている人しか知らないのではなく、上手くいかなかったその他大勢の人は表に出てこないだけの話。

0から1円を生み出すことが、どれだけ難しく、それがどれだけ大切か。

例え話にするとわかりやすい。
例えば、何か商品を作って、それを1個500円で売ろうと考えた人がいたとする。

大企業のビジネスモデルではなく、個人商店をする場合に大切な考え方なのは、「まず、その商品を路面で売ってみる」ということである。

失敗する人は、店舗を作ろうとする。

なんとも素晴らしい(画期的な)商品ができた!店舗を作ろう。
どんな店舗にするのか?ターゲットは誰にしよう
どんな内装?どこの立地?
集客はどうする?マーケティングは?SNSは?HPは?
仕入れとコストを考えて、サービスラインナップはこれとこれで・・
人を雇うためには人件費がいくらくらい必要で・・

というふうに。

もちろんそれらは大切なことだけれど、優先順位は一番ではない。

最も大事なことは、まずお客さん第一号を作ること。これ以外にはない。

まず売ってみる。見知らぬ人に、500円で自分の時間や商品を買ってもらうということが、どれほど難しいことか知ろう。別にモノづくりや店舗ビジネスに限った話ではない。

就活支援とか、キャリア支援とか、「〇〇な人を応援したい」系のことをやっているつまらない人たちへメッセージ。
「無料」と「1時間500円」は天と地ほどの差があることを知ろう。

あなたの1時間を、500円で買ってくれる人がいますか?

もしいないのであれば、あなたの話は、コンビニのアルバイトよりも時給が低いということ。

受託業で稼ぐ考え方

上で書いた例は「自分で商品やサービスを作って売る」という考え方だが、個人で稼ぐ項目別、大分類として2つ目に「受託業」というものがある。

誰かの商売の手伝いをして、その代わりに対価をもらう、という考え方。

コンサル業も、営業代行も、HP制作も、これにあたる。

受託業の大切な考え方としてベースにあるのが、フィー以上の利益を依頼主(クライアント)にもたらす必要がある、ということ。

クライアントに利益をもたらすというのは、大きく2つ。
1つ目は「売り上げを上げる」で2つ目は「コストを下げる」。その2つのいずれかを念頭に置いて受託業を考える。

「売り上げを上げる」or「コストを下げる」の二択で、一般的にわかりやすいのはもちろん後者のほう。その意味がわからない人も多いと思うが・・

例えばコンサル業も大半は「自分の人件費を投下することで、それ以上のコストカットができる」から成り立つ。
一般的に思われている「戦略を描いて」「提案をして」「新規事業を生み出す」というコンサルティング業は、感覚値として全体の数%程度なのではないか。

例えば個人コンサル業を担うことを想定する場合、自身の月額フィーが10万円だとする。年間で120万円。
(実際に僕が大阪時代に個人コンサルの仕事をとある経営者から受けていたが、その費用は月に1回・3時間のミーティングで10万円だった)

クライアントが年間で使う人件費は、社員1人あたり400万円が平均として、50名の会社であれば単純計算で総額2億円。

2億円の人件費に対し120万円を上乗せし、その代わりそれ以上のコストカットをもたらしますよ、という提案式がイメージできれば、自分というリソースを売り込むことなんて難しくもなんともない。

何をするのかといえば、マーケット調査でもいいし、営業組織への貢献でもいい。
社員を雇って(あるいはパートや派遣を雇って)行う業務アウトプット以上の成果を出すことは、さほど難しいことではない。

世の中の97%は中小企業であり、ご存知の通り、中小企業の多くは人材難・人材不足で喘いでいる。

なぜ人材難かといえば、中小企業に所属する多くの社員は、さほど優秀ではない人たちが多いわけであり、経営者は人材不足と採用に頭を抱えている。
逆に人の問題を抱えていない中小企業があるのであれば、教えて欲しいくらいだ。

個人コンサル業を考えているあなたは、一程度優秀だと思う。
何を持って優秀とするかは、一旦議論の外へ置いておく。

そんな中小企業に対し、あなたの時間リソースを売り込むことが、難しくないということは想像できるようになったのではないだろうか。

大したことをしていないのに、フリーランスで稼いでいる人、受託業や個人コンサル業で稼いでいる人が散見される理由は、そこにある。

自分の「できること」ではなく、相手の「困りごと」から仕事を生み出す

これは僕自身の経験則も込めて見出した話なのだけれど、多くの人は「自分自身のできること、スキルは何か?」という発想をする。

だから、スキルや経験を積みたいといって、つまらない商材にお金と時間を投下し、結果的に残った資産はほぼ使えない資格だけ、という結果になってしまう。得をするのは教材会社だけ。

上で書いたように、ほとんどの中小企業は人材不足で喘いでいる。
世の中の大半が中小企業とすると、仕事は有り余っているはずなのだ。

受託業を主に考えると、相手の困りごとに合わせるという感覚が必須になる。
大企業出身の人、エリートの人ほど、案外これが難しい。

結果、60歳で大企業を辞めたシニア人材が、職に溢れるという事象が発生してしまう。銀行のリストラ話などもまさしくそれである。

「何をやってきたのか」「何ができるのか」という発想から、「相手の困りごとに合わせて仕事を作る」という感覚にチューニングできた人は、受託業で面白いように稼げるようになる。仕事に困るなんてことは、ほとんどあり得ない。

とまあ、僕の経験則も込めて書いてみた。僕自身が個人事業で受託業を始め、回らなくなって株式会社をつくり、一緒に仕事をしてくれるメンバー増えている今になってこそ、書くことができる内容だと思ったので、誰かの何かのヒントになればと願っている。

世間の風の冷たさを、心地よく感じられるくらいにはなってきたと思う。

いつも読んでくださって、ありがとう。