企業における「人事制度」の目的って何?

2020年2月9日マネジメント・育成, 経営者向け

とある企業で、人事制度の構築のコンサルティングを行なっている。

そもそも「人事制度」とは何か?という問題に答えられる人は多くはない。
経営者であっても、人事部で働く人であっても、だ。

人事制度の目的とは何か。

企業にとって必要な人材を確保・育成・動機付けするための基盤を提供し、事業戦略の達成と組織力の強化を促進することであり、人事制度とはその仕組みのことである。

いかがだろうか。

と、いうのはもちろん模範解答であるものの、正直よくわからない。

冗談で書いているのではなくて、実際に企業において人事制度について本気でどうにかしようと思うのであれば、上で書いたような模範解答を論じても全く無駄であることが多い。誰もそんなことを考えて企業を運営しているわけではないからだ。

もちろん僕も仕事柄、例えば上場企業を相手に人事制度の話をするときは、いかにもコンサルっぽく上のような議論をベースに、論理的かつ多面的に、様々な人事制度の仕組みと情報を提供しながら進めていく。

けれど、ぶっちゃけ経営者相手にはそんな話は通用しない。笑
上場企業でその議論が通用するのは、サラリーマン経営者か、大手の人事部長相手にしかあり得ない。

 

僕が個人でコンサルティングをやらせてもらっている中堅企業の経営者には、もちろん人事制度の基本の「き」は伝えた上で、ぶっちゃけの話をしている。物事はいつもシンプルなのだけれど、賢い人ほどことを難しくしてしまうというのは、不思議な話。

ということで、僕なりのアウトプットを書いてみようと思う。

人事制度は経営の本質である

あなたがもし経営者ならば、組織で働く社員たちが日頃、何を考えているかわかるだろうか。

やりがい?スキル?成長?

そんなわけないだろう。もちろん会社の成長なんて、本気で考えている社員は経営者のあなた以外にはいない。

組織で働く社員たちが本音・本気で関心を抱いているものは2つしかない。

1つは「給与」で、もう1つは「人事」だ。以上。

タブーだろうか?でもそれが、経営の本質である。

経営の本質とはつまり、経営のタブーであることに他ならない。
それだけ「給与」と「人事」を握っている経営側は強いし、社員はそれによって動く。

あなたが逆の立場なら、そうでしょう?
でもなぜか、他人事となると多くの人が「社員も同じように会社の未来と成長のことを四六時中考えている」と思っている。そんなわけないだろう。

もちろん、悪い意味ではないし、他意もない。

ここで重要なことは、社員は給与と人事によって動くし、成果が2倍になるか半減するかは、それを支える仕組みである「人事制度」でほぼ決まるということだ。

会社として、圧倒的な言行一致を行う重要性

例えばよくある企業理念に「顧客第一主義」とか、あるいは少し前には「従業員ファースト」とかいう言葉がある。

けれど、実際にそれが行われている会社というのは極めて少ない。

例えば、少し極論だけれど、金融機関の企業は「顧客第一主義」というようなスローガンを掲げていることが多い。

けれど、例えば銀行や証券、あるいは保険でもいいので、「顧客にたっぷり支払いをした結果、倒産してしまいました」という企業を聞いたことがあるだろうか?

もちろん答えは「NO」だ。本当に顧客第一主義を謳うのであれば、そういう企業が1社や2社でもあっていいものだと思うのだけれど、聞いたことがない。

そして実際は、真逆のことを行なっているように僕には見えるのだけれど、いかがだろうか。

  

別に理念やスローガンは、経営の好きなように掲げていい。好きなように謳っても良いと思うのだけれど、壮大で立派な理念が嘘つきであるくらいならば、何も言わない方がまだマシだ。

それよりも、口数は少なくても良いので、きちんと言ったことを行う(=言行一致を徹底する)ことを継続していれば、自然とそれが会社のブランドになるし、何よりも社員はそれを真剣にみていて感じている。

例えばよくあるケースが「失敗を恐れずに新しいことに挑戦しよう」「我が社は挑戦する風土です」というような謳い文句がある。

けれど実態の99%は、挑戦して失敗した社員を評価せずに叱責をし、場合によっては降格人事まで行う企業もある。そんなことでは誰も新しいことに挑戦しようとは思わないし、気づけば全員、上の顔色を伺うヒラメになっている。

逆にいい例として、厳しくて物静かな経営者であったとしても、社員の働きをしっかりとみており、うまくいかなかった小さな挑戦をした社員に対して「新たな挑戦だ、素晴らしい」と評価したらどうだろうか。

「こんな小さなことも見てくれているのか」「うまくいかなかったけれど、認めらた」という小さな成功体験を積み重ねて、もっともっと挑戦してみたいと思うのが人間のホンネではないだろうか。

しっかりとトライを積み重ねた社員には、賞与としてボーナスに反映させたり、昇格によって応えたりするだけで、社員は絶大なる信頼を会社に置くようになる。難しいことは何もない、言ったことを行う(=言行一致)だけだ。

実はこれ、僕が実際に社長に対して申し伝えていることで、人事制度を改訂するという場合にも、同様に伝えている内容だ。

上場企業で何百億円もの売上がある場合ならいざ知らず、中小・中堅企業に対して本気で物事を変え、結果を出そうと思えば、小難しい理論など一切不要になる。

だからと言って理論の勉強や、実際の経験が不要というわけではない。
むしろそれらは必要条件なのだけれど、それを踏まえた上で、圧倒的に本質的なアウトプットをしなければ、価値は生まれない。

試しに「人事制度」とググってみて欲しい。画像検索だけでも体裁の整った綺麗な人事制度関連の資料が大量に出てくる。これらはおそらく、ほとんど正しいことを言っている。

けれど、実際は正しさだけでは物事は変わらないし進まない。人間の本質はいつも真逆にある、と僕は思うのです。