頭のなかのサイコロ ~USJ再建!森岡毅さんの話を聞いて~

経営者向け

今更ながら、来る2019年12月19日に関西で開催された、NewsPicks主催のセミナー「West Ship2019」に参加してきた内容を。

WEST SHIP

今回のカンファレンスの目玉である、株式会社刀の森岡 毅さんの講演があり、非常におもしろく勉強になりました!

みなさん、知ってる人は知っているかと思いますが森岡さんはご存知でしょうか?

あのUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)にハリーポッターを誘致し、V字回復させたことで有名なスーパーマーケターです。

森岡 毅さん 経歴 

講演のなかでは、株式会社 刀で支援をしている丸亀製麺とネスタリゾート神戸の事例を交えて非常に楽しく(関西で参加者約1000名越えの会場を爆笑の渦に巻き込んでいました。笑)話をしていました。いやあ、良かった!

消費者は頭の中でサイコロを振っている

そのなかで印象的だったのは、消費者の購買行動構造を知り、そこに向けて的確のアプローチするということです。

森岡さんいわく、売上はこのようにして構成されます。

「売上」=「サイコロの目」×「(1人当たりが)サイコロを振る回数」×「サイコロを振る人数」×「配荷率 」×「客単価」

特に重要なのはサイコロの目。サイコロの目とは、選ばれる確率のことです。

消費者は、何か購入する(ものを買う、ごはんを食べるなど)際に、頭のなかでサイコロを振っているといいます。

たとえば、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートがすべて同じ距離にある場所から「コンビニへ行こう」と仮定します。

その際に、消費者は頭の中でサイコロを振ります。そのサイコロの目の比率は

セブンイレブン 50%
ローソン 30%
ファミリーマート 20%

と構成されてるとします。

この比率は各ブランドに対する好感度やイメージを表します。この場合、セブンイレブンが高いのは総菜商品がおいしい、デザートがおいしい、あのメーカーの商品が置いてある、店がキレイなど、色々な要素が考えられます。

上のサイコロの目を持つ人は、コンビニ行く2回に1回はセブンイレブンに行くということです。その確率をどれだけ上げることが出来るか?がマーケティングの仕事であり、マーケッターの腕の見せ所だと。

ここまでが、サイコロの目の話。

人々は頭の中でサイコロを2回振る

これを前提に、丸亀製麺の話へ。

丸亀製麺は2018年1月以来、既存店の前年同月比の客数が16カ月連続で落ちていました。

それが今年(2019年)5月に客数増に転じました。

なぜ、勢いのあった丸亀製麺が16ヶ月も連続で落ちていたのか?
そこにはサイコロの目のからくりがあったのだと。by森岡さん

「支援前の丸亀製麺PRは季節限定商品に注力していました。たとえば、牛すき焼きうどんです。
おいしいそうです。食べたくなりますね。しかし、サイコロの目から見たときに丸亀製麺の強みを消費者に伝える行為とズレたPRになっていたそうです。それは何か?」

森岡さんが消費者の購買行動を分析したところ、丸亀製麺に来るような消費者は同店でうどんを食べるのに

2回サイコロを振っていたのです。

 

消費者はご飯を食べるとき、1回目のサイコロで「カレー、うどん、ラーメン、牛丼、中華」など様々な目を持ったサイコロを振ります。

そこでうどんの目をいかに増やすかが重要ですが、丸亀製麺は季節商品、上記でいうと牛すきをPRしたため、「うどんではなく牛肉」 だという印象を発信したことになります。
つまりは、そもそもうどんを食べたい人から外れたPRになっていました。

かつ、牛すきのPRはうどんを選択して「丸亀」や「はなまる」などたくさんあるうどん店から丸亀を選択して来店のうえ「何を注文しよかな?」という2個目のサイコロを振らない限り、刺さらないPRになっていたということです。

まとめると、丸亀製麺でうどんを注文する人は、頭の中のサイコロで、

1回目:カレー ?うどん?ラーメン?牛丼?中華? を決める

⇒(うどんが食べたい)

2回目:牛すきうどん ?天ぷらうどん?ぶっかけうどん・・?

という風に、かなりの回数、頭の中で選択を繰り返してようやく「丸亀製麺で」「このうどんを食べよう」となるわけです。

 

ここに課題があると認識した森岡さんは、丸亀製麺本来の強みである「店舗でイチから作る打ち立てのうどん」を全面的PRしてブランドを再確立させ、2019年今年5月に客数増に転じさせました。

 

消費者の頭の中で、1回目のサイコロの目に入らなければ、勝つ確率が極端に下がるからです。
ようは1回目のサイコロで勝たなければ、2回目のサイコロで勝つ勝負を仕掛けても無意味だということです。

リブランディングに成功した丸亀製麺は、人々の頭の中の”1回目のサイコロ”の中に飛び込み、その選択の確率を上げさせるというマーケティングに成功したのです。 

 

消費者、すなわち顧客の頭の中の構造を知ることで、何をどのタイミングで商品またはサービスを選択するのか?

非常にシンプルに見えますが、緻密なトライアンドエラーを繰り返して導き出した結果だと講演を聞いて感じました。

 

究極のマーケッターは、人々の頭の中にブランドを作り出す。