人事制度のトレンドについて書いてみた
10月11日(金)に日付が変わった頃に、昨日のブログを更新しています。久しぶりに仕事の話を書きます。はい。
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今日の夕方、とある上場企業の経営企画部長との打ち合わせ(2回目)で、初対面の人事部長さんが出てきた。僕1名と先方2名の打ち合わせ。
(まあ、よくある話。でも、違う部署の部長2名が出てくるのは割と珍しい)
テーマが「人事制度改革」という経営に近い話(経営企画部も関わる)と、主導になる人事部が絡む話をしたくて、ということだったのでなるほどなと敢行。
自由にいろんな議論をさせてもらったので思考の整理も兼ねて書いてみよう思う。今日のテーマは企業の『人事制度』に絡む話。
(初級編)人事制度ってなあに?
初歩の初歩のような話なのですが、そもそも人事制度って何?という話。
(企業の人事部にいても、大手企業の場合は分業制なので、全体像が分かっている人は意外に少なかったりもする)
さらっと流すので、興味がない人は飛ばしてください。
人事制度というのは大きく3つの機能があって、それらは有機的に連動している。ようは三位一体ということ。
わかりやすい図があったので抜粋。ソースはこちらの記事。
この図を見たら一発で忘れないと思うのだが、覚え方としての説明を書いてみる。
まず、会社が求めるものを定義したのが「等級制度」。
等級制度は基本的に階段形式になっていて、スキルが身についたり資格を有したりして成長すると、階段を登っていく形になる。イメージはこんな感じか。
階段を登った一番先が、その企業にとっての「最も理想な社員」ということになるので、会社が求めるスキルや人物像というものがこの等級制度に反映されている。
次いで「評価制度」。
階段を登るための評価をする仕組み。何をどのくらいやれば一段上に行けるのか、というようなことを定義している。
そして最後は「報酬制度」。
階段を1段登ると幾らの報酬で報いるのか、頑張った時にはどのくらい賞与(ボーナスですね)を反映させるのか、ということを決めた仕組みのこと。
これら3つをまとめて人事制度と呼んでいる。
理想の社員像というのは時代によって変わる
日本企業の多くは割と「年功序列型」でいまの時代を作ってきた。
年齢を重ねるとともに上でいう階段を上り、評価と報酬が上がっていくという仕組み。
でも、もちろん現代的にはそれが崩れているので、人事制度自体を適切に見直そうよ、というのが昨今の流れ。
これには2つの考え方がある。
1つは、人事制度自体を時代に合わせて変えていくというパターン。
数年単位で細かくチューニングを行うという場合。大企業がこれをやると失敗するケースが多いのは、柔軟な社員がそもそも少ないから・・
そしてもう1つは「時代によって変化できる社員を採用する」というパターン。
求める人物像を「柔軟な人物」として採用する仕組みを作ってしまう場合。こちらは(一部の企業だけれど)オーソドックになりつつあると言っても良いかもしれない。
僕が今日その企業の人たちに伝えたのは、採用する社員の特性を分けましょうよ、ということ。
一般的な総合職というかビジネス職は通常通りに採用するけれど、それだけでは評価し得ない人物も採用したり適切に評価したりできるようにする仕組みを作るのも一つの選択肢ですよね、という話。
どういう人かというと、例えば「データサイエンティスト」のような特殊な技能を持った人たち。彼らはそもそも市場にいる数が限られているので、年収が新卒でも700〜1,000万円なんてのもザラにある。
通常の評価・報酬制度では対応できないので、別軸で作りましょうとうご提案。
特殊人材という括りでいうと「価値創造人材」という別の生き物も考えられる。
これは今までは全体の中の「最優秀層」としか認識されていなかったけれど、優秀さの定義をより言語化した形と言える。
情報感度が高く、オペレーティブな役割ではなくて新たなアイディアや発想で事業を作っていくことができる能力を持った人を、これまた別で採用・評価しようよということ。
新規事業なんていうのは1年や2年そこらでできないものも多いので、5年スパンで種蒔をしている人を通常通り3ヶ月や半年で評価したりはできないよね、ということ。ここは評価制度の話。
特殊人材を選抜して適切に評価するという意味で最も優秀な企業の一つが、日本企業だと富士フイルムやリクルートのような会社。仕組みとして非常に秀逸。
外資系で言うとマッキンゼーはやっぱりすごくて、例えば評価をするための独立した部隊が別で存在しているという徹底具合い。
普通は「管理職が直属の部下を評価する」ということにしかならないけれど、彼らはメンバーも管理職を選ぶ権利、評価する仕組みを持っているうえで、非常に透明性の高い評価の仕組みを持っていると言えよう。
透明性が高いと言うことはつまり、「この評価は、こう言う理由だ」とすべてが論理的に説明できると言う点で、納得性が高いと言うこと。
ただし、日本企業でここまで徹底すると逆に合わない場合の方が多いだろう・・
なんだかんだ日本企業には「ある程度の年功序列」が合っているように思えたりもする…
面接方法のトレンドというものも存在する
社会を眺めていてわりと面白いなと思うところでいうと、企業が応募者を面接する仕組みというのも割とトレンドがあるということ。
かの有名なGoogle社は「構造化面接」という面接方法が有名なのだけれど、それは世界中から優秀な社員を集め続けられる同社ならではのノウハウなのだと思う。
参考までに書くと、構造化面接というのはつまり「誰が・どこでやっても・同じ面接ができる」という構造化された仕組みのこと。
面接官は、何をどの順番で聞いて、何を評価し、どういう深掘り質問をするのかというところまで全て仕組み作られているという点では、グローバルワイドで事業を展開する企業なんかには向いている手法だと思う。
一方でもちろんデメリットも存在しており、
・そもそもその仕組み(構造化)の質を上げるのがとても難しい
・面接官トレーニングに膨大な時間と労力がかかる
・その仕組みを実践できる優秀な社員がそもそも少ない
・(上で書いたような)特殊な能力を持った人材を選別するのが難しい
というような点が考えられる。
例えばGoogleやマッキンゼーのような超ハイグレードの企業ならまだしも、日本企業の水準で同レベルの構造化面接を実施するというのはとても難易度が高い。
そもそもその仕組みを誰が作れるのか?とか、社員が実践できるのか?とか、色々とハードルがあるのだ。。
ということで、日本企業が取り入れる場合は、選考初期の段階では構造化面接を実施して効率を上げ、選考後半では非構造化面接によってちゃんと人物特性に合わせた引き上げを実施する、という仕組みを作るのが実は最も効率的だと思う。現段階ではという条件付き。
選考初期の段階で導入する構造化面接の目的は、どちらかといえば「採用してはいけない層を選別する」という機能に近い。
日本の大手企業でいうと、新卒採用においては上のハイブリッド型の選考を実施しやすいという利点がある。
理由は明確で、面接を複数回にわたって実施をしても違和感がないという点にある。
逆の例を書くと分かりやすいので取り上げると、中途採用の選考面接は大体の場合2〜3回程度。
大体の場合は2回(1回は人事、もう1回は管掌役員や部長など。あるいは社長)となると、面接の仕方を分けるというのが難しくなってきてしまい、どうしても最後は「責任者の好き嫌い」ということになってしまう。
別に良いのだけれど、「中途採用の面接は2回が通説」という曖昧なバイアスが蔓延しているのはどうだろうか、と個人的には思っている。
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人事ネタを書くといくらでも書くことができるので、少しずつ切り分けて書いてみようかな。ちょっとビジネス色が強くなったので、読んでもらえるかどうかとも思うけれど…
僕自身としては、数年前には就活生の立場だった中で、今はこうして企業の採用のみならず人事の仕組みだとかに触れられるというのはとても興味深い。
ビジネスサイドから見たときに、学生や20代の人たちがどういうことを考えるともっとハッピーになれるのか、という観点でいろんな素材を提供できたらいいなあ。と思いつつ徒然なるままに。