『さびしさに、まけないで』(カン・セヒョン著)を読んで 〜「大人になりきれないあなた」に贈る青春の物語〜

2019年1月5日書評(という名の感想文)

ちょっと前のこと。ジュンク堂の海外作品コーナーを眺めていた時に、アジアの文学作品という棚があって、そこで不意に目に飛び込んできた一冊の本があります。

それがこの、『さびしさに、まけないで』という本です。

どうやら、韓国で出版されたものを日本語に翻訳したものらしいのですが、表紙の女性の写真と、そして『「大人になりきれないあなた」に贈る73の物語』とう帯のコピーが妙に心に響いて、気づいたら手にとっていました。

著者であるカン・セヒョンさんは放送作家。

韓国で放送されていた深夜のラジオ番組の中で、リスナーとのやり取りをしつつ、自ら「青春」というものに対する言葉を書き、そしてその文章の朗読を行っていたとのことです。

その文章で描かれていてる等身大の言葉が、韓国の主に20代から30代の若者たちに絶大に支持され、それらの文章をまとめて一冊の本にして出来上がったのが、この本なんですね。

そこに書かれているのは、あくまでも正直で、そしてどこまでもまっすぐな感性です。

うまくいかなかったこと。できなかったこと。失敗してしまったこと。よくわからないこと。社会の荒波に飲まれそうになって、それでも自分の足で進もうともがいていること。

なんども傷つき、失敗し、失望し、いつのまにかいろんなことに臆病になってしまう自分がいて。

それでも、その中に素敵な煌めきとか、些細な喜びとか、生きる意味みたいなものを見出して、繊細な言葉で描いている。

そんな「青春」にまっすぐに向き合う言葉たちが、僕はすごく印象に残っています。

この本を読んだ人たちはきっと、こんな風に思うはずです。

ああ、自分だけじゃなかったんだ。

って。

それほど、等身大でまっすぐで、そしてそれらは読んでいる僕らみんなの言葉なんだと。そんな風にさえ思えてきます。

時々、そのまっすぐさが痛かったけれど。

僕も、こんな文章を書けたらいいなって。

決して、綺麗なだけじゃあないけれど、でもどこか厳しさと、根っこには愛情があって、素直に自分の気持ちを言葉にしている。

ジュンク堂で手にとってみて、気づけば一気に読みふけっていた僕がいて、即買いで、もう一度読んでみた本です。

ちょっと、痛すぎるかな。時々ね。

青春って、いいですね。

さびしさに、まけないで

さびしさに、まけないで