『天使のくれた時間』 〜あの時「Yes」とこたえていたら、ふたりは、どこにいたのだろう〜

2019年1月6日書評(という名の感想文), 趣味

いつの頃だったか。

夜中にふとテレビをつけてみると、またあの映画が流れていた。

感情の記憶に、すごく鮮明に刻み込まれていたことを思い出し、もう一度食い入るようにテレビにのめり込んだ。。

どうして、この映画のことを覚えていたのだろう。

調べてみると、この映画の公開は2000年とある。僕は小学生。最初に観たのは、小学生の頃だったのだろうか?

映画館で観た記憶はないので、おそらくはテレビで再放送されたものだったはず。ビデオか、DVDででも観たのだったか。

それにしても不思議なはなしで、すごく鮮明にひとつひとつのシーンを覚えていて、それでいて改めて夜中のテレビで観てみると、それらが以前観た時と同じように心を揺さぶってくるんです。

もしあの時、違う道を選んでいたら・・?

という問いかけが、不思議なほどに10代の僕の心にしみる。本当に不思議なほど、僕にとってはその世界観が痛いんだ。

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ニコラスケイジ主演のジャックという男性が主人公。

13年前。

「いかないで・・」と、そう呟く恋人ケイトの手を離し、仕事で成功するためにロンドンに飛び立った。

13年後のいまジャックは、クリスマスイブの夜に、会社に残って仕事をするほどの仕事に打ち込んでいて、ウォール街で大成功している。

そんな彼はプライベートでは優雅な独身生活を過ごしていて、、

そんなクリスマスイブの夜を過ごし、クリスマスの朝目覚めるとそこは、タワーマンションのベッドではなくて、普通の家のベッド。隣には、ケイトが寝ていて、子どもたちがクリスマスの朝をはしゃいでいる。

ロンドン行きをキャンセルし、そのまま恋人と結婚する方の人生を選んだ、もう一つの人生が物語。

というのが、この映画のストーリー。

何気ないような映画なんだけれども、僕はこの物語が、やけに心に焼きついていて。

一度手放してしまった手を、もう一度掴むこと。

ましてやそれが、本当に大切な手であった時。

そんな幸運に恵まれる人は、きっとリアルな現実の社会では、そうあることではないのかもしれない。

すごく印象に残っているのは、ジャックがケイトの誕生日を忘れて彼女を怒らせてしまい、その埋め合わせとして高価なディナーをセッティングするシーン。

その夜、二人でベッドにはいるのだけれど、その時、彼女を見つめるジャックの優しい眼差しが、すごく痛い。

詳しいセリフまでは忘れたのですが、

「まるで、出会った頃のような目で見つめるのね」

という彼女の言葉と。

もう一度出会って、もう一度彼女に恋をする。

ニコラスケイジのカッコよさと、なんとも言えない優しさが詰め込まれたシーンで、僕は食い入るようにそのシーンを見つめていました。

この映画は見ている僕らに、何を伝えるのでしょうか。

これほど、この映画にのめり込む人も、そんなに多くはないのかもしれない。

ありそうな物語だし、すごく派手な映画なわけでもないのだけれど。

単純に、お金や成功、地位や名声といったものよりも、家族や大事な人、愛が大事なんだ。ということを伝えているわけではない。

人生をやり直すことができれば、というネガティヴなメッセージでもない。

僕はこの映画は、愛を相対的に描くことによって、その人にとって本当に大切なもの。大事な人。愛する人。欲しいもの。成し遂げたいこと。

いろんなことを考えるきっかけをくれる映画だと思っています。

誰を想って生きていくのか、自分にとって自分の人生はなんなのか。

時間という、目に見えないけれど、すごくすごく大切なものがあって。

何を手にしたいのかも大事だけれど、それ以上に、大切な人と過ごすかけがえのない時間もあるんだよって。

そういった、一見見逃してしまいそうなもの、手放してしまいそうなものがあって、そこにちゃんと目を向けようよ。

あの時選ばなかった「未来」がやってくるのではなくて、いまを生きる「今」しかないんだと。

きっと。

もう何年も前に見た映画なのに、ふとあの時の記憶が蘇ってきました。

もう一度、見てみたくなりました。

ありがとう。