「『センス=量』だから、とりあえずたくさんこなす」という間違いを正そう
よく「あの人はセンスがある」「自分にはセンスがない」と言いますが、センスってなんだと思いますか?という話。
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センス=量
これが答えだと思うのです。センスとは、量であると。
なんのこっちゃ。と思う人に向けた僕の考えを。
イチローは24時間、野球のことを考えている
野球のイチロー選手は、メジャーリーグで最も「センスがいい選手」と言われています。
でも、ご存知のようにイチロー選手は体格は小さく、パワータイプの選手ではないし、メジャーリーグでは大人と子供のような体格差があるわけです。
イチロー選手が去年引退するまでに積み上げた偉大な歴史はここで改めて書く必要はありませんが、イチローをイチローたらしめる最大の要因に「バッティング・センス」が挙げられます。
なぜ、彼は野球界を代表するセンスと呼ばれるのか。
イチロー選手が毎朝、試合の朝食には奥さんの弓子夫人の手作りカレーを食べるというのは有名な話ですが、なぜ、その習慣を続けているのかを考えたことがありますでしょうか。
実は、イチロー選手にとって弓子夫人の手作りカレーは、体調のアンテナの役割を果たしています。
今朝はちょっとカレーが辛く感じたな、と思えば、体に乳酸が溜まっている=疲労が溜まっているんだな、ということ。
であれば、いつもよりさらに入念にストレッチを使用だとか、自分の疲労を計算に入れた試合運びをしようという風に微調整を重ねるのです。弓子夫人のカレーは、イチロー選手にとって体調のリトマス紙なのですね。
あるいは、イチロー選手は階段を登る際に、自分が踏み出す一歩一歩のすべてに意識を向けているといいます。
右足のふくらはぎが少し張っているなとか、左足の足首に少しの違和感があるなだとか、であれば今日のバッティングフォームは気持ち右足の角度を変えよう、とか。
すごくないですか?ここまで徹底している。
イチロー選手は、物心がついた時から日常の全てを野球に関連させて、文字通り24時間365日、野球のことを考え続けてきました。
言うなれば、24時間、野球のトレーニングを重ねていることと同義です。
それが彼が最もセンスのある野球選手であると言われる所以だと思うのです。
これだけの量が、彼のセンスを生んでいるのです。
それだけ徹底していれば、体格が小さいとかは関係のない話なのです。
センスの良いアイディアを出す共通項
例えばビジネスの場で、アイディアを出したり、企画をしたりするときにも共通で、それらのセンスとは、イコール「量」なのです。
広告代理店やコピーライターの人たちが、最初にアイディアや企画をするときに教わるのは「とにかく量を出す」ということです。
10個や20個のアイディアを出すのではなく、1000個のアイディアをどれだけ出し切れるか。
まずは「当たり前のアイディア」を出し切ってしまう。最初の100個は「素人でも思いつくアイディア」です。
そして101個目から1000個目までは、素人ではないけれど、ありきたりのアイディアです。
そして1001個目からようやく「プロとしての下限」のアウトプットができる。
錆びた水道水を出し切ってしまって、後からきれいな水が出てくる。そんなイメージです。
『センス=量』という考え方は大切ではあるのですが、実はこの「とりあえず1000個出そう」「まずは量を出そう」という考えは、実際の場で毎回実践するのはとても難しいのです。
なぜならば、時間は有限で、リアルなビジネスの場では1つの企画・1つのアイディアを出すのに無限の時間をかけることはできないからです。
それに対して「量をこなすために徹夜をして頑張る」とか「とりあえず量をやれ!」と発破をかけて頑張らせるというのは、現実的ではないし、本質的ではありません。
「量が質に昇華する」はある意味正しいのですが、「いくらでも時間をかける」という現実的ではない前提は悲劇を生むケースも多いのです。
脳に微電流が流れている状態を楽しむ環境を作る
じゃあ、どうするのか。
答えは簡単で、「考えることが楽しくてしょうがない環境を作る」です。
経営者や上司がメンバーに向けて「量をこなせ!」と言いたくなった場合は、その言葉をぐっと堪えて「その物事を考えることを楽しむ」「知的刺激を刺激し続ける」と周りの環境をつくることを考えることです。
自分自身の場合は「量をこなそう!」とガムシャラに頑張るのではなく、自然と「考えることを楽しむ」状態を作るのです。
例えば、僕はビジネスモデルフェチです。笑
世の中にある新しいビジネスの情報や、それだけではなく幅広く新しい知的刺激を常に求めていて、ようは「知的好奇心」が僕の原動力なのです。それは学生時代から今もなお、オンオフ問わずに続く僕の源泉にあるものです。
なので僕は朝起きて夜眠るまで、平日も休日も、街を歩いていても、常にアンテナが立っています。「あれってなんだろう?」「これってどうしてだろう?」という好奇心です。
でもそれは誰かに「興味を持て!」と言われたものではないところがポイントです。僕自身が興味の赴くままに、その対象にアンテナを張っていて、それが承認される仕事であり環境にあることが、今の僕を支えていると思うのです。
常に脳に微電流が流れている状態になると、あらゆる出来事が僕の中で有機的につながっていきます。
これがさらに進化した人も世の中にはいます。
あらゆる興味心、探究心、日常のすべてがつながってアイディアや企画に化けていく人たちです。
彼らは無意識的に圧倒的な量をこなしている。
がんばっているのではなく、ついついやっちゃってしまっているのです。
そしてその、ついついやっちゃっていることが量になり、センスに昇華するのです。
例えばコンサルティング業界で働く人たちは、もともと知的好奇心が強く、常に「なぜ?」と「それってほんと?」を考える思考のクセを持っています。
そういう人たちが業界の中であらゆるビジネスに触れ、情報が掛け算されて経験が積み重なっていくと、初めて見る物事でも企業でも、瞬時に常人の遥か上をいくアウトプットをすることができるのです。
それは魔法でもなんでもなく、日常の情報習慣、そして思考習慣の圧倒的な量の差に起因することなのです。プロなのですから、当たり前ですが。それで高額なフィーを稼いでいるのです。
余談ですが、もしあなたが経営者なのであれば、コンサルタントに「答え」を求めるのではなく、彼らの「考え方」を学ぶようにすることです。
そもそもコンサルタントに「答え」を求めるという発想自体が間違っており、彼らから盗むべきこと学ぶべきことは「正しさ」ではないからです。
もちろん、きちんとしたコンサルタントを選んだ上で、という条件付きではありますが。
コンサルタントという職業がどうしてあれだけ稼げるのかというと、上で書いた条件を踏まえた上で、さらに目の前の問題、課題に対して圧倒的に考え続けるからです。
コンサルタントは「考えることに対して対価をもらう」仕事なのです。
あなたの業界に、当てはめてみてください。
アイディアの正しさを見つめるときは、そこに「愛」があるか問うてみる。
<追伸>
センスは情報量に比例する。情報習慣を身につけた人生はハッピー。
<追伸の追伸>
ついついやっちゃっていることを仕事にできた人生は、超絶ハッピー。