新卒採用の選考で何を見ているか?
僕が自社の新卒採用に関わらせてもらって、2年目に入る。
20代そこそこで、いいものかと思ったりもするのだけれど、理系の大学院生(しかも旧帝大)とまともに話せる人はうちの会社ではそう多くはないので、しょうがないと思っている。。
さて、実際にどういうところを見ているのか?と聞かれることも増えてきた。
ちょうど先週話した学生からも「ぶっちゃけ、何見てますか?笑」と聞かれたので(それは流石にお茶を濁してそれっぽいことを言っておいたけれど・・)、ブログの方で書いてみてもいいかなと思い書いてみる。
よくある新卒採用の「うちの会社はこれを見ています!」というやつは、大体嘘っぱち。
というか、嘘じゃないけれど、当たり前じゃね?という話。それを満たしていても必ずしも受かるわけではないし、むしろ受からない人の方が多いんじゃないかと思っている。
例えばよくあるのが「うちの会社の事業理解があり」「理念に共感しており」「主体性とコミュニケーションがあり」「積極的に物事を前に進める意欲がある人」というような項目がある。実際に目にしたことがある人も多いはず。
自己理解や業界理解、あるいは最低限のコミュニケーション能力とかはもちろんベースとして必要だけれど、それは十分条件ではなく必要条件。
それくらいで入社できるほど簡単なわけないって。笑
加えて、僕の場合はそもそもそういう最低条件を満たした学生たちとしか会うことはないので、そのフィルタリングは人事でやってよという話。
地頭の良さとは「帰納力」と「演繹力」が優れているということ
まず第一に「地頭の良さ」はマスト。これはもう後から身につくとかは(ほぼ)ないので、最低限の能力は入社時に見ないとキツい。
何を、どうやって見るのかというと、「帰納的な思考」が身についているか。
そして「演繹的な思考」が身についているか。まずはこの2点。
論理的思考力とか、具体化力、反対に抽象化力とかももちろん含まれている。
例えば僕がよく話すのは、その学生がいま、どんな業界や企業群を受けているのか?という話。
大体の場合は「無形商材の業界メインで、コンサルティングファーム(この会社とこの会社とあの会社、みたいな)」とか「商社とファームと人材業界大手と(たまに金融大手)」みたいな感じでしょうか。
であれば例えば「じゃあ、君が今たくさん受けているコンサルティング業界のこれからって、どうなっていくと思う?」「その企業群が残っていくためにはどうしたらいいと思う?」というようなことを会話に合わせて聞いていく。
もちろん、前提情報の差はあれど、いくつかの企業を受けている場合は事前に調べているはずだし、選考を受けている中で得られる情報をもとに、ある程度組み立てることが出来るはず。
これは何を見ているかというと、その人の「帰納的な思考レベル」を測っていて、「情報A」と「情報B」と「情報C」を掛け算して「仮説D」を論理的に導き出せるかどうか。(それを帰納法という)
この質問と会話のやり取りから、どのくらいのアウトプットが出るかによって、その次の質問を深めていくかどうか、別の話をするかどうかを決める。
限られた情報をもとに質の高い会話ができる方であれば、こちらからもっと情報を提供し、さらに話を深掘りしたり、広げたりしながら、その人の「立体的な思考力」を測っていくこともする。
実際のその業界がどうなっていくのか、事業を組み立てていく上で必要なことは何か?その業界で新規事業を立てるにはどういうものが想定されるか?
ということを深掘りしていく。いわゆるケーススタディ的なものも実施する場合もある。
(この条件でこの企業の事業の売り上げを拡大するには、何をすれば良いか?とか)
実際にここまでやる例というのは多くはないけれど、このレベルの会話ができる人も実際に存在するわけで、すごいなあと思います。笑
この辺りまでくればかなり優秀層だと思う。
抽象論を投げかけ、演繹的な思考を測る
一方で、抽象的なキーワードを投げかけてみることもする。
「じゃあ、そういう業界のこれからの中で、今後求められる能力(や人材)ってどういうものだと思う?」というような問いかけをする。
もちろん学生に対してこちらが想像を絶するような知識や経験は一切求めておらず、学生が接している情報が限られていることは十分に汲んだ上で、彼らからくる結論を聞くのだけれど、ぶっちゃけ結論自体はなんでもいい。笑
だって、オリジナルでエッジの効いた回答なんて出てくるはずはなく、必ずどこかから見聞きした回答が最初の結論としてくる。
大事なのは、その回答の背景に対してどのくらいの思考があって、今までの会話の中や自身が選考を受けている企業に当てはめて説明できるか、という能力を見ている。これを「演繹的思考」という。
演繹的思考とは、「結論A(事実A)」に対して、「前提B」をいい、「結論C」をいう、という思考法。
上の例で言うと、「これからの時代生き残っていく人は、言われたことをただやるのではなく、自分自身で考え価値を作っていくような人だと思います」という回答が出たとする。
(実際にこのどこかで見聞きしたような回答がめっちゃ多いだ・・)
それ自体はどうでもいいのだけれど、その後に続く「理由は3つあります」という展開に対して何を・どのように考えれるのか?という話を聴きたいのです。
「1つ目は、こういう時代背景だから、価値を作る人材が求められる」
「2つ目は、自分が尊敬するこの人・あの人は社会で活躍しており、このような特性があるから」
「3つ目は、この業界も、あの会社も、こうなっていくから」
というような説明ですね。この回答に対してキャッチボールをしていきます。
やっぱり経験則上、これらの能力が秀でているのは、国立大学の理系(特に院卒)の学生の人たち。
難関大学になればなるほど、地頭の良さは秀でていることを実感するし、本質を見抜く洞察力に優れているように感じる。
そりゃそうだという話なのですが、複数の科目(特に理系科目)をきちんとやり抜いてきたベースがあり、大学時代はひたすら「仮説→検証」という思考を繰り返してきた人たちなのですから、賢いですよねという。
大企業がSPIの試験を導入している理由は、1つはもちろん適性検査という意味も多いのですが、水準以上の企業が見ているのは特にこの「地頭力」という部分。
特にSPIの非言語問題はこの「帰納力」と「演繹力」を測るテストだから。
ここまでぶっちゃけると嫌になる人がいたらごめんなさい。
ここまで書いてきたのだけれど、僕が今の立場で新卒採用に関わる時に、僕の頭の中で考えていること。実際はここまでやらない場合も多いし、(言葉はあれだけれど)適切な選考水準に落として見る場合も多い。
必ずしも正解ではないし、企業によって求める人材像というのは異なるので、悪しからず。
もし、それなりのところに、それなりの勝負をしたいという方がいれば、是非もう一度考えてみてはいかがでしょうか。