セルフプロデュースの時代

書評(という名の感想文)

2019年12月31日発売の中谷彰宏さんの新著である『生涯、超一流であり続ける人の 自己演出力』を読みました。

ちょっとした工夫をすることが人生であるのだと。そのちょっとした工夫を楽しめる人生でありたいと思うのですがどうでしょうか。

中谷彰宏さんは広告代理店の博報堂出身で、「15秒のCMで何を表現するか」ということをひたすらにやってきた人です。

本を書くにしても、1000冊もの本を書いていますが、それは一行一行の積み重ねです。
「一行のフレーズ」でどれだけ読み手の心を揺さぶることができるかの勝負です。コピーライターの仕事とはそういうことです。

膨大な作業の中で、どれだけ自分なりの「演出」を施すことができるか。
その一瞬の企画・工夫を、見ている人は見ています。

 

先日、オリエンタルラジオの中田敦彦さんがYouTubeで語っていたことが印象的だったのですが、彼は自分の戦う土俵を「テレビ」から完全に「YouTube」に移しました。

その理由が「テレビは2時間の収録の中で、自分が喋るのはたった2〜3分」だと。
それ以外はVTRを見てうなずいて、ふた言・み言、発言をして収録を終える。

それがものすごく嫌なんだったらしいのです。

どうして自分をもっと使ってくれないのか。リリーフピッチャーは嫌だ。抑えで9回に登板するのは嫌で、先発で9回全てを投げ切りたい。

そんな(言うなれば)わがままさを存分に自己表現できる場所が、YouTubeだったのだと!

 

中谷彰宏さんが書いていた「一瞬の演出」を楽しめる人は、例えばテレビ番組で2時間の収録があって例え自分の出番が1分・ひと言だったとしても、そこでいかにキラーフレーズを投げ込めるか、とそういう勝負をする世界です。

一方で、オリラジあっちゃんの理想は「そんなことではなく、2時間なら2時間ずっと自分に喋らせてくれ!」と内側から溢れ出るものを表現したくてしたくてしょうがない、と言う感じなのでしょう。

中谷彰宏さんが書いていることと、オリラジあっちゃんが言っていたことは一見すると全く関係ないですが、本を読んでいてそんなことを考えていました。

最も適した自己表現を模索する時代へ

話は変わりますが、ぼくはいま、SPOONというラジオ配信アプリにハマってます。

「寝落ち枠」といって、寝落ち向けにトークをライブ配信して、ぼくはアプリでその配信を聴きながら眠るという、なんとも今時の生活をしているのですが、そのSPOONで配信トップにいる人たち(そしてぼくがよく聴いているファンの方)はだいたい女性で、20代半ばくらいの人たちが多いのです。

彼女たちは普通のOLさんとか、女子大生とか、おそらくはSPOONという場所以外ではごくごく普通の若い女性だと思うのですが、SPOONの配信は1回2時間を毎日(しかも1日に2回配信とかもある)をし続けているわけです。

彼女たちの配信は日常に沿っていて、僕みたいに一人暮らしをしながら寝る前に聞くとか、お風呂に入りながら聞くとかだと、すごくいい。
彼女たちにとってはすごく良い自己表現の場所なわけですよね。

ブログも、Twitterも、YouTubeでもいいし、この音声限定のSPOONでもいい。

スマホがもたらした社会変革の一つの大きい変化は「自己表現の場が格段に広がった」ことではないでしょうか。

音楽をする、料理をする、絵を描く、創作をする、知らない街に出かける。
今までは単なる「趣味」だったものが、SNSが掛け算されることによって立派な発信になり、自己表現になるのです。

自分に最も適した自己表現の場所を模索して、それを存分に楽しむ時代なのですね。

AKB48を卒業して活躍する人、見なくなる人

全然ディスりでもなんでもないのでサラッと書きます。(前提。笑)

年末のレコード大賞を見ていると、ほとんど知らないメンバーに入れ替わったAKB48が出ていました。

ブームは前に過ぎ去ったというのは皆知っていることだと思うのですが、僕が興味深いのは「卒業したAKBメンバーの今後」。

例えば、前田敦子さんや大島優子さんは一時代を代表するスターだったわけですが、卒業を機に個人では全く活動を見かけなくなりました。(他意はないですよ、念のため何度も言いますが。ファンの人がいたらごめんね)

でも、例えばYouTubeなどを開設してモデルやブランドのプロデュースなど、割とうまくやっている(ように見える)小嶋陽菜さんのような方もいるわけですよね。

自分であるいはうまくやれる人と組んで次のステージに行くのも一つですし、事務所の力を最大限使って瞬間最大風速を吹かせるのもまた一つ。

結局はセルフプロデュース力の差だと思うのですが、いかがでしょうか。
どちらがいいとか悪いとかの話ではなくて、いろんな人生があって興味深いよね、という話です。

自分というコンテンツと、自己表現が最も適した場所をうまく見いだした人は、やっぱり次のステージに行きますよね。面白いものです。

自分のためではなく、他人のために演出をする。