面接で言われる「コミュニーケーションの目的」とは
私の強みは、コミュニケーション能力があることです。
大学時代は4年間、接客業のアルバイトをやってきました。
お客様の中には、わがままな人や理不尽なことをいう人など、色々な人がいましたが、私は「その人がどんな考えでその発言をしているのだろう」と発言の意図を考えてコミュニケーションを取ることによって、それらの問題を解決してきました。周りからもコミュニケーション能力が高いと言われます。
その経験から私は人と話をすることが好きだということに気づき、大学時代に培ったコミュニケーション能力を活かし、御社に入ってからも色々な人と仕事をする中で貢献をしたいと考えています。
僕が就職活動の時に言っていた「自分の強み」の文章です。
僕は就活は上の文章を軸にして突破をしました。
・
・
・
嘘です。w
なるほど、こう言えばいいのか!
とちょっとでも思った人、いませんか?
いても良いのですが、ビジネス的にいうと上の文章は0点です。
何も言っていないのと等しい文章です。あれだけ書いたのに・・?
(強いて言うなれば、4年間接客業のアルバイトをやっていたんだね、という事実のみ伝わるでしょうか)
でも、いざ自分自身が就活をするとなった時、あるいは大人の世界で「あなたができることはなんですか?」「あなたの強みを教えてください」と言われれば、半分以上の人が上のような内容を答えるのです。
ええいっ、やめいっ!
絶対にやってはいけない書き方なのですが、なぜか多くの人がそう書いてしまう。そう言ってしまう。
何百人と就活生の人たちと話をしたりES(エントリー・シート)を見たりしてきましたが、多いこと多いこと。
ということで、今回は選考時に言われる「コミュニケーション」ということにフォーカスを当てて、その目的について書いてみようと思います。
なぜ、コミュニケーション能力が大切だと言われるのか?
なぜこうも猫も杓子も「コミュニケーション能力が大切」だというのでしょうか。
ぶっちゃけ「他に見る要素を知らない」「なんとなくで見れる」という面接をする側(企業サイド)の都合が半分、
あとは選考を受ける側(就活生サイド)として他にどんな要素を磨けば良いのかがわからないからという理由が半分、というのが所感でしょうか。
間違ってはいないと思います。
でも、大切なのはそれだけじゃあないというのはわかるでしょ?
コミュニケーション能力が大切だとはいうけれども、じゃあ、そもそも「コミュニケーション能力って何?」という質問に正しく答えられる大人はどのくらいいるのでしょうか。
ましてや就活生の中で、正しくその意味を話せる人はどのくらいいるのかという話。
そのくらい、イロイロなことが曖昧にされたままで情報が錯綜しているというのが実情です。
ビジネスにおけるコミュニケーションとは何か?
仕事をする上でコミュニケーションが大切だと言われるのは、そもそも仕事というのが、自分と相手(誰か)が何らかのやり取りをすることによって進むという前提、が理由にあります。
自分一人で完結する仕事というのはないのです。
例えば、会社がお得意先となんらかの大きなプロジェクトをするとする。
そのプロジェクトの全体を100とすると、ある部分50は外注をして他の会社にやってもらい、残り50の仕事は自社のA部署とB部署が担うと。
A部署は30の仕事を持っていて、部長はメンバーに対してその30の仕事を振っていくわけですが、メンバーはその30の仕事においても自社のみならず関係者とやり取りをしながら物事を進めていく。
こういう風に仕事というのは進んでいくわけですが、そこで大切なコミュニケーションとはいわば伝言ゲームのようなものだということ。
上司がお得意先がこう言っていた、こう考えていた、というものが複数の人を介して伝言されるうちに、意図や背景が曲がって伝わってしまう。
結果として、頑張ったのに想定とは違うものが出来上がってしまった、ということが実際の社会では往往にしてあるのです。
伝言ゲームを正しくすることこそが、コミュニケーションの本質です。
自分と相手の認識のズレを限りなくゼロに近づけること。
この能力が高い人ほど、コミュニケーション能力があると言われるわけです。
言うは易しですが、これが実際となると結構難しい。
もちろん方法論はいくつもあって、言葉だけではなく、表情や雰囲気、雰囲気やジェスチャー、絵や音で示すなど、最も適した方法を選んだ上で、自分と相手(場合によっては複数)の人の認識を合わせることができる人が、社会に出るとものすごく重宝されるわけです。
だからこそ企業は、正しく適切にコミュニケーションができるかどうかという側面を、就活における面接時に図ろうとするわけなのです。
面接時におけるコミュニケーション能力は何が見られているのか?
とはいえ、コミュニケーション能力というのは社会で求められる能力の中でも、あくまでも最低限の要素の一つあるということは忘れてはいけません。
受ける業種や企業にもよりますが、コミュニケーション能力があることは重要ですが、それだけで合格になるわけでも、ましてや冒頭に書いた文章のようにコミュニケーション能力が強みになるわけでもないということは理解いただけたのではないでしょうか。
その前提の上で、では、面接時に見られるコミュニケーション能力というのは何か?
それは「質問に対して、適切に答えることができるか否か」です。
当たり前のことだと思いますか?
実際にやってみると、これが結構できていない人が多い。
というか半分以上の人たちは、レベル1のこの段階でNGになって、それ以降の話だとか人柄だとかに到達しないわけです。
質問に対して、正しく回答するというのは、例えば、
・あなたの強みはなんですか?→「弱み」でも「頑張ってきたこと」でもなく、強みを答える
・「あなたは、◯◯ですか?」→「はい」か「いいえ」でまず答える(起承転結で回答しない)
・自己紹介をしてください→「私の強みは〜〜です」というのは自己紹介ではない
というようなことです。
社会ではよく「Qに対してAで答える」と言いますね。
(クエスチョンにアンサーで答えるという意味、これを「アンサーファースト」と言います)
このくらいでいのか?と思う人もいるかと思いますが、アンサーファーストを徹底するのは、結構難しいです。
少なくとも社会人として適切なコミュニケーションができると判断されるレベルになるには、ある一定のトレーニングは必要です。
自分について話せることがコミュニケーション能力ではない
コミュニケーション能力というと、いろんな人がいろんな意見を言いやすいというのは先ほど書きました。
例えば、性格が明るい(ポジティブ)な人が、必ずしもコミュニケーション能力が高いわけではないはずなのに、印象論としてそのように見られがちなケースというのは多く存在します。
重ねて書きますが、「自分はこういう人間で、こういう価値観なので◯◯に喜びを感じます」というような、自分について語ることができる力もまたコミュニケーション能力とは別の力です。
コミュニケーション能力とは、相手が言っていることを正しく理解をし、それに対して適切に会話キャッチボールができる力のことです。
自分らしさを語れるだとか、自分の軸を言語化し、パターンを持っているというのは、方法論であり、コミュニケーションの本質とは別の話だということです。
企業の人事の皆さん、間違えないでくださいね。
「リレーション(関係性)」と「思考力」はコミュニケーション能力とは別
営業組織においても「コミュニケーションが大切」とよく言われるわけです。
営業マンが話をする相手、特に初対面の相手と関係性を築いたり、「悪くないな」と思ってもられるスキルはとても重要だということ。
確かにそのスキルはすごく重要ですが、一方でそれは必ずしもコミュニケーション能力が高いということと一致はしません。
関係性(リレーション)の形成が得意であっても、いざ仕事を進めていくなかで、コミュニケーションの齟齬が発生するというのは日常茶飯事です。
これは営業色が強い会社の特徴でもあります。
一方で、例えば研究職の人たちというのは口数が少なく、一般的にはコミュニケーション能力が低いと思われがちですが、ビジネスフィールドにいる研究職の方々は、論理的なコミュニケーションに長けた人たちが多いというのもまた事実です。
対人関係の中におけるスキルは、慣れも必要なところもあるので、いま苦手な人もそこまで懸念せずとも大丈夫です。
むしろ、上で書いたような「コミュニケーションの本質」についてきちんとわかった上で、一つ一つの言動を丁寧におこなっていくこと。それに尽きるわけですね。
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僕から皆さんへのメッセージとして伝えたいことは、コミュニケーションという言葉に踊らされることなく、その意味をもう一度自分の頭で考えて欲しいということ。
その上で、自分にあった場所を選ぶために、多角的に情報を集めてください、ということです。
むやみに人とたくさん話をしてコミュニケーション能力を上げる!と意気込んでもしょうがないのです。
それならば、今自分に何が必要なのか?を冷静に考えるために、時間を使ってみてください。
今回は、ここまで。読んでくれて、ありがとう。