AI(人口知能)が採用を行うようになることについて。
これから人材業界においては、あらゆる場面でAI(人口知能)がその入口を担うようになる。
そう言われて久しいですが、そのことについて人材業界は真剣な議論をしていくことが求められるのでは、と思っています。
例えば、いま議論され始めている内容としては、
いま国内の企業が行っている採用、新卒採用しかり、中途採用しかり、それらの採用の場面を、今後はAIが担うようになるだろう。
すべての人と企業のマッチングの入口においてAIがどんどん活用されるようになって、最もコストのかかる部分である「採用」の人件費が激減していく、
という風に。
実際、10年後には今ある「採用」の形は変わっていて、否、変わる必要があって、一方でそのことに対して危機感を持ってその裏側を考え、設計している企業はほとんどなくて。
それはあらゆる業界においてもそうですし、さらに言えば人材業界においても、その危機感を持って取り組みをしている企業は、ほとんどない。
ほとんどと言ったのは、まったくないわけではなくて、少なくとも1社はあるからで、そしてその企業が今後10年かけてそのマーケットを作っていくことになるからだと僕は思っています。
そして、今後10年のその流れについて、大まかに僕が思うことを今、このタイミングで考えをまとめて書き綴っておくことは、ものすごく意味のあることだと思うので、改めて自身の考えを整理しながら、書いていきたいと思います。
日本という市場において、AIを用いて本当に効果的な採用を行うことは不可能である
長くなりそうなので、結論から書きたいと思います。
僕は、この日本という市場において、AI(人口知能)を用いることによって、企業が本当に最も効果的な採用を行うことは、ほとんど不可能だと思っています。
ポイントは2つ。
1つは、「日本という市場において」ということ、
そしてもう1つは、「最も効果的な採用を行う」ということです。
この2点を踏まえた上で、議論を進めたいと思います。
まず、前提として、やっぱりAIが採用並びにHR(人材領域)全般に関わってくる時代が来ることは、ほぼほぼ間違いありません。
ここまで世界中でAIの研究がなされていて、そして、あれほどの人材企業がいま、その仕組みとマーケットを作ろうとしている。
あらゆる人や企業を適材適所に、そして効果的に再配置するために、AIは今後ますます重要なファクターになってくるはずです。
重要なファクターになることは間違いないのですが、今の日本、そして10年後であったとしても、AIが最も効果的な採用を行う手段には、なりえないはずです。
理由は大きく分けて2つ。
まず1つは、日本という市場は、世界の中でも極めて特殊なマーケットである、ということです。
これは悪い意味ではなくて、むしろ「人材」という側面で見ると、非常に優秀であるから、という点が、他の国とは決定的に異なる点です。
日本人は識字率がほぼ100%であるという、ある意味、異常な国です。
全国民が、一定水準以上の教育を受けており、社会に出てくる人材の中では、どの層を切り取ったとしても、めちゃくちゃ優秀であると。
もちろんピンキリなんだけれども、最低ベースといった意味では、すごく優秀で、これは他のどの国にも見られないものなんですね。
いま、AIの研究は進んでいるけれども、科学的に見たときには、まだまだなんですね。
何がまだまだかということ、数多くいる日本人の差異を適切に見極めて採用を行い、適材適所に再配置するほどには、AIは発展していない。
そして今後10年間を考えたとしても、そのレベルまでは到達していないはずなんです。
これは、科学的な視点で考えて、ということ。
いつかはそのレベルまで研究が進むことも、もちろん考えられますが、近い将来という視点で見ると、まだまだのはずです。
仮に近い将来、日本でAIを用いて採用や人材配置を行ったとしても、ある程度は成功するはずです。
日本人は全体的にレベルが高い。だからこそ、さいころを振って採用を行ったとしても、大きな失敗はない。
日本人というのは基本的にオールマイティです。だからこそ、指揮をとる人さえ大きくずれていないならば、実働する人をランダムに選んだとしても、組織としては一定水準以上の成果は必ず出ます。それが日本的な組織の良いところでもあり、逆にデメリットでもある。
有名な”2:8の法則”(あるいは2:6:2の法則)というのを耳にしたことがあるはずです。
組織の中においては、どのような組織であったとしても、働きアリと、働かないアリに分かれます。
その組織がどんな組織であったとしても、優秀な人と、働かない人が、どうやっても生まれてくる。
そしてその組織の中から優秀な2割の人を取り除いても、残った人の中から新たな優秀な2割が生まれてくるんですね。
それが組織の面白いところ。
粗い目で採用を行うレベルまでは、AIの応用化はいくはずです。
仮にその段階で、HRで応用化までいったとしても、日本であったら大きくはこけない、というのが僕の考えです。
2つ目の理由としては、上でさらっと書いた「AIの研究レベル」という理由。
AIに限らず、こういった科学技術の最先端にいるのは、軍です。
アメリカ然り、各国の軍が、莫大なコストをかけて、研究をしている。
それこそ、科学技術の力が国の力に直結するわけですから、世界中の各国がしのぎを削って、AIの開発に取組んでいます。
その中で、軍のレベルでまだ何も応用化されていないという現状を考えると、いまの時代、そして今後10年の時代では、応用化されるレベルまではいかないだろう、という考えです。
世界大戦が、数学者の戦争であり、そして次は物理学者の戦争であったように、科学技術というのは、間違いなく国の力です。
だからこそ、研究だけではなくて、教育の面においても莫大なコストをかけて、国は科学力を底上げしようとしている。
日本だって、ちょっと前の10年くらいは、中高生の”理科離れ”が騒がれて久しい。だから、いま国は、科学力の養成にこれだけ力を注いでいるんですね。
AIの研究に関しては、まだ応用化が目に見える形でされていないだけ、という考え方も一つ正論ですが、僕らがいる日本の大学の中で、そして特に物理の分野に携わっている僕らの周りで、そういった基礎研究が進んでいる話を聞かないということを考えると、採用を行うレベルでのAIの実用化というのは、まだまだ先の話であるはずです。
そういった考えをベースにすると、いまホットな話題のAIが採用を行う、ということは、当面においてはかなり無茶な話であるということです。
という前提を踏まえた上で、一方で、HR業界にてAIの開発及びその仕組みづくりをすることに意味はないのか、というと、そんなことはない。
むしろ、ものすごい価値を持っていることは事実である、ということも併せて書いておきたいと思います。
マーケットリーダーとしての役割
AIをHR業界でやっていくことの一番の価値は、やはり「先にその仕組みを作ってしまう」ということだと僕は思います。
そしてそのマーケットリーダーとして動けること自体が、ものすごいプロモーションになる。
と僕は考えています。
もちろん、見せ方として、現段階でこれをやっているのはプロモーションのためですよ、とは言わない。
言わないけれど、やっぱり採用の仕組みの枠組みが大きく変わっていくこと、そしてその仕組みづくりをして、世界に対して仕掛けていくこと自体に価値があって、さらにはその変革の中では、どのレベル感でその仕組みが動いていくのかということは多くの人にはわからない。
新卒一括採用の仕組みだって、戦後何十年も変わっていないわけです。
そして、その仕組みが日本中に浸透してしまった後は、数十年もの間、その仕組みに対して何か疑問を投げかけたり、ましてや新たな仕組みづくりをしようとする動きは、なかったわけではないけれど、全体としてはほとんどできなかった。
社会全体として、いまの採用の仕組みはやっぱり変えるべきだよね、もっと良くなるはずだよね、このままではいけないよね、という議論自体が起き出したのは、ここ10年〜20年くらいの間のはずです。
つまり、一度その仕組みが出来上がってしまえば、その採用のあり方に関して社会全体で議論をするためには、かなりの時間がかかります。
今は個人で意見を発信してムーブメントを起こせる時代ですので、もちろん以前よりはその時間はかなり短くなってきている。
でも、「人材」に関するものは結果が目に見えるまで、時間がかかることは間違いない。
そして、ことAIに関しては、その結果が出るまでに、技術力がどんどん上がっていくであろう、ということが大切なんだろうなと僕は考えています。
さらには、グローバルの視点で見たときには、やっぱりその採用方法というのは、一定レベルでは効果的であろうということに価値がある。
海外というのは、地域によって、人材のレベル感がものすごいピンキリである。
だからこそ、判断要素が粗い段階であったとしても、AIを導入することで採用に関わるコストを抑えることができるはずです。
という目線で考えたときには、やはり日本の中でその仕組みづくりを仕掛けていくことには、価値があるのだろうと思っています。
とまあ、つらつらと書き綴ってきましたが、あくまで僕という一個人の意見であることを前提に、読んでもらえたらなと思っています。
僕自身は、ITの時代が進んでいく中で最も大切なのは、やっぱりアナログである人間だと思っていて。
ITの先には、いつだって人間がいるんです。
そこに「愛」がないのならば、AIなんてただのロボットなんです。
間違いなく来るAIの時代。その時代を作っていく人たちに向けた、僕のメッセージです。
ここまで読んでくれて、ありがとう。
<追伸>
HR業界の選考を受けた時の話。