多くの人が、何が正しいかなんてわからない。
そんな答えのない世界で生きているのかも、しれない。
冷え切った東京の街並みを歩きながら、そんなことを考えていた。
故郷(ふるさと)から遠く離れたこの街で、誰ひとりとして知り合いのいない新たな土地で、自分自身の何かを賭して闘ってきたのだろうか。もう5年にもなる。
何を想って、過ごしていたのだろうか。
昔から、負けず嫌いで頑固で、人の話を聞かない。
プライドと理想だけは高い一方で、僕らのことをどう思っているかなんてわからない。普段何を考えているかさえ、わからない。
この街で、それまでとはまったく環境の違うこの場所で、何かを成し遂げたかったのかも、しれない。
不思議なものだなぁ。僕のそれらも、譲りものなのだろうか。
会いたいけど、会いたくない。
向き合いたいけど、向き合いたくない。
そんな曖昧さの中で、夢かリアルかわからないような、そんな間で時間だけが過ぎ去って行く。時計の針が滅茶滅茶になったような気さえする錯覚とともに。
いや、もともと僕だって、何がリアルなのかわからない曖昧さの中で生きていたのかもしれない。自分では気づかないまま、それが正しい現実だと思い込んだまま。
必死で、何者かになろうとしていたのだろうか。
その心の中心にあったのは、故郷にある、ものたちか。
今はなにも、わからない。
ゆくゆくは、聞いてみたい気もする。